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第244話

「おれ……」 「れおちん、ドーナツ食べよ!」 「え?」 見上げるといつものようににこにこ笑う鶴来先輩がいて、安心してしまった。 あんなことを言わせてしまい、この傷。正直どんな顔をしているのか、させてしまったのか不安で仕方なかった。 ギュウと手を握るしか出来ない俺が逆に気を使われた。 「じゅんじゅんの所為で僕、疲れちゃった!甘い物食べたい!」 「はい!ドーナツ食べましょう!」 「それなら、先に消毒するから来い」 「ぶーー!僕お腹空いたもん!」 「直ぐ終わる!玲音、先に戻ってコーヒー淹れ直してくれ」 「はは。鶴来先輩、俺待ってるので、しっかり手当てしてもらって下さいね!」 「もう!れおちんまでそんなこと言うの!?」 観念したらしい鶴来先輩は、本当に待っててね!と俺に言い寝室のドアノブを持った。 頷いて一歩下がるとゆっくり締まっていく。それを見て直ぐに背を向けた。 「……、ほが……」 「え?」 何か聞こえた気がして振り返ったけど扉はもう閉まっていて確認することが出来なかった。 だから知らなかった。また俯いた鶴来先輩を潤冬さんが抱き締めていたなんて……… 「それで!どうして俺は今こんな状態になっているんでしょうか!?」 「んー?れおちんなにぃ?」 「なにじゃなくてっ!」 戻って来た2人にコーヒーを持ってきて、1人掛けに座る潤冬さんと、俺の向かいに座るだろう鶴来先輩の分をはいはいとテーブルに置いた。 ここまでは良かったんだ。でもなんでか鶴来先輩は俺の横に座って、どうしてか腕も組んできた。 これで平然としていられる人がいたら教えて欲しい。拍手を送るよ。 「いや、すぐ近くにいたよ!ドーナツ食べてる屈強な男が!」 「あ?これが美味いの知ってんだろ?」 「お、美味しいですけど……」 助け舟を求めたのに全然役に立たないんだがけど、この野郎。 チラッとこっちを一度横目で見たのに直ぐにシャットアウト。目の前の美味しいに夢中だった。3大欲求恐るべしだ。この野郎は欲に食われたんだもう助からないんだと納得するしかない。 それにしても、本当によく食べる。甘い物好きだったんだなこの甘党野郎め。 いや、あの時もパフェをむしゃついてた。ん?あれは餌付けか? 「ねぇ、れおちん!」 「うおぉっ!なんでしょうか」 またまたどうしてか腕を引っ張って来て、距離が近くなる。 でもって鶴来先輩は小声でもそもそ話し始めた。 「ずっと思ってたんだけどね、れおちん、春にぃ知ってるでしょ」 「え?お兄さんてことしか……」 「本当に?他には?」 「ほか……あ!そう言えば」 「なになに??」 聞こうと思ったのにタイミングを逃していた。 アルバムの写真のこと。

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