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第245話(side:???)

彼は目の前に置かれたコーヒーには目もくれず、やっと会えた主をずっと見つめていた。もう逃げないで。そう言いたそうにあの頃と同じく長い手を伸ばし腕の中に閉じ込めて。 咎めることなく好きにさせ、自分はコーヒーに手を伸ばす。カップを傾けふぅと一呼吸置いてからまた話を始めた。 「お前は、昔と変わらないね。それで?さっきの続きはなんだい?」 彼が促すと途切れながらも懸命に伝えようと口を何度も動かした。 ――、ど――ったーー? 「なにを?」 あ――、ーーう――てあ――人に―――――た? 「なにも」 ――あ――の――に、―――っ――って――? 「間違えて開けてしまったんだよ」 優しい眼差しを向け、頷き、時折犬にするよう頭を撫で、一つひとつに言葉を返していく。 ーを―――ら、もう――――を――てあげ―――? 「もう見ているだろう?」 違う。そうじゃない。とでも言うように首を振り、また見上げて口を開く。 ―――にこの―――広――、――さに―――い――だって、 いろ―――が――で――って、――い――て、迷―――る――、 ―――あげ――る? 「なにも」 今度は彼が首を振った。しかし話を止めることはなく続けた。 ――て。 「ごめんね」 ――日―――を、―――って――出し――れ――? 「なにもしていないよ」 ―え―― 「だから、言えることはないんだ」 俺は、―――知――い――…… 「うん」 ――必――あ―――。 「そう」 段々と弱くなっていく声に耳を傾け、眉の下がる顔を見つめた。 ――て―、あ――は、俺の―――人―――……… 「そうなんだね」 ねえ、だから―――…… 「それならば、よく見ているんだよ。ケン」 彼は言うと角砂糖を一つ取り、コーヒーに落とす。ぽちゃん……小さい音が鳴り、それはそのまま沈んでいった。 最後まで見つめていた彼は何を思い、何を見つけられたのだろうか。 背中に回した大きな手はくぅと握りしめられ、シャツに皺を作ったのだった。 ××× 一番に見つけたのは、彼?

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