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第249話

「あ、いや、あの……」 「なんだ?」 「なんでも、ない、です……」 困っていると、ふーん?あそ。小さく言って、本に目を落とした。本当は気になるだろうに、潤冬さんはこれ以上聞いてはこなかった。まぁ聞かれても言えないから、良かったんだけど。 だって気付いたと言うか、思い出したことは高橋さんが最初に言っていたあの話だから。 安息とは言え、そこには癒してくれる相手がいるだろう。媚びも売らず、ただ癒してくれる相手。あの場所にはその一人だけが許され招かれる。 今年の生徒会長、潤冬さんも同じかは分からない。だって、俺の想像してる王道生徒会長とは違うし。それに良く考えたら俺だけかも分からない。他にもいて、その中の1人でも全然おかしくない。何故なら癒している自覚はないし、逆に怒らせることの方が多いから。 だからこそその中に俺がいるのはおかしい。いや、もしかしたら癒しの中に俺みたいな曲者?スルメイカ?みたいな刺激物?があった方がいいのかも知れない。 ずっと同じだと飽きるし。たまに違うものがあった方がいい……? と言う以上のこと思い出し気付いてしまった。暇な夏休みの午後のこと。 なんと優雅なんでしょう。 「俺、…ゃま、ですね……」 「あ?さっきから何を、ブツブツと」 「だって…ぉれが、いない方が…気も…つかわ…ないでい、いから……」 「ハッ!お前もたいっがいだな。俺の周りはこんなんしかいねぇのかよ」 「……」 「俺が邪魔だっつたか?帰れっつったか?言ってねぇよな。言ってねぇことでなやんでんじゃねぇよ。つうかアレだろ、玲音。腹減ってんだろ」 返事もしていないのにべらべらとお喋りは止まらず、だから気分も落ち込んで――と言ったところでグゥゥ……と俺の腹の虫が鳴いた。 正にその通りで、ちょっと前から小腹が空いていた。そろそろおやつだなぁ…と考えていて、それからここにずっといたいなぁっておかしいっぱいあるしなぁって。 で、気付いたらあんなことになってた。 「潤冬さんの話長くて、お腹が空きました」 「……お前じゃなかったらぶん殴ってっからな!?」 「俺も、ぶん殴っていいんですよ?あ、でも手加減してくださ」 「んなことするか、アホがっ!チッ」 バンッ!と力強く本を閉じ、潤冬さんはソファから何故か立ち上がり、寝そべる俺の前を過ぎて行く。 「ぁえ?どこに――ぐぇっ!?」 「てめぇの腹の虫に餌やりすんだろうが」 俺の頭から手を離し、それを言うとキッチンに行った。 …………ありがとうございます。心の中で手を合わせ、おやつが無事に到着するのを腹の虫とひたすら無心で待った。

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