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第260話
あいつに調べろと言ってから、今日で一週間。未だ連絡はない。
鳴らないスマホを見つめ、嵩音は真剣に考えていた。
こんなに時間がかかっているのは珍しい。大抵の場合、調べろと言ってから3日で情報を渡してくる。
前回玲音を調べろと言った時は翌日に連絡がきた。まあ、全て真っ赤な嘘だったが。それなのに今回は未だ何の音沙汰もない。
ふと、珍しいというよりもおかしくないか?
考えるうちに疑念は深まる。
電話の時に感じた違和感。牽制するように聞こえたアレは、もしかすると本当に牽制だったのでは?
だとすれば、玲音の裏には何が?
深く、ふかく、言葉の意味を、裏を、その先の何かを考え、答えを導き出そうとする。
もう少しで、何かが見えそうなんだ。眉を寄せ、腕を組んでうーんと唸る。
学園に知られたくない何か?……いや、それはないな。
あの理事長秘書があらゆる手段で全て洗いざらい調べてるはずだ。
学園でなければ、なんだ?
どうして牽制する必要があるんだ?なんの為に?知られると困ることって……
なんだ?
クソッ!なんだよ!なんで隠すんだ?困るって、なにが?
なんなんだよ!!
俺にも知られたくないって!!
「おれ、に、も………?」
頭にフッと浮かんだ言葉。それを口に出した途端にスーッと熱が冷めるのを感じていた。
ソファに一度座り直し、口に手を当てる。更に分析するためだ。
牽制=誰にも知られたくない。だから学園の全てに置き換えてしまっていた。
だけど、彼らではなく俺個人に知られたくないことだとしたら……
でもなんで俺に隠す必要があるんだよ。
理事が知ってんなら俺も知ってて良いはずだろ?
意味分かんねえ!アーッ、クッソ!!スッキリしねえな!!!
喉元まで来ているのにもう一押しが降りてこない。
嵩音の熱はまた上がり始め、考えることは無理そうだ。
そして、気付いていなかった。
スマホに表示された彼からのcallの文字を……
×××
自分からかける選択肢はない。
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