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第265話
「あ、れ……?」
華奢な彼だと思っていたら、何だか見たことある人だった。
ハル先輩だ。
ギャアと倒れる声がしたからと、羽葉は安心して彼らに近づこうとした。
だから気付かなかった。
背後にある存在に。
「ハ――っぐぅ!?」
腰を上げた瞬間、後ろから羽交い絞めされ口を塞がれる。
逃げようにも力は強く、ビクともしない。うーうー!とくぐもった声を出したが思う程響かない。
あぁ、もう駄目だー。
またあの時の二の舞だー。
諦めた直後、静かに。暴れちゃダメ!とこれまた聞き覚えのある声が背後からした。
「?」
この声、誰だっけ。
「君の待ちにまったものが見られるかもよ」
ふと前を見ると、ハル先輩はいつの間にか抱きしめられていた。躊躇いがちに自分からも手を回し、安心したように頭を預けると、相手はその頭も抱き、暫くすると顔を上げたハル先輩に顔を近づける。
角度を変え、チュッチュし始めた。そう。待ちにまった、チュッチュが始まったのだ!
それはもうとてもいいチュッチュだ。時々離れ、見つめ合いまたチュッチュ。
チュッチュである。チュッチュして………
あぁ……尊い…………
「んふーーー!」
心とは裏腹に間近で行われるそれに興奮しすぎて声と鼻息ともろもろ抑えられなくなっていた。
あぁ、これではまた向こうにバレてしまう。
しかし彼のその不安を消すように、後ろからまた、声がした。
「君も大概なのだっ」
「!」
その喋り声は!!
名探偵レオンにかかれば全て丸ごとパパっとお見通しだ!
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