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第266話

精いっぱい大人しくし、抑えられている手をたたく。意図を理解した相手はスッと外した。 そう、背後の人は察しの良いあれでそれのあの妖怪!………ではなく! 「もむぎうんっ、ぷは!和民君!」 振り返ると長い前髪で目元は分からないが、赤毛のゴリラと一緒にいて、あの時に来てくれた彼がいた。 久しぶりの再会に嬉しくなって羽葉は彼の名前を呼ぶ。 相手も嬉しいようで、口端はニコニコと持ち上がり楽しそうに返した。 「そう、和民君です!」 「和民君!」 「和民君でっす!」 「わたみくーん」 「和民君ですーー」 「わたみくぅぅん!」 「和民君でぇぇぇす」 「わたっ」 「いい加減にしろっ!」 「あびゃっ!?」 またまたまた、背後からの声と共に今度はパコンと頭をたたかれる。 誰だっ!和民君との逢瀬を邪魔する不届き者は! 振り返って目が点になった。 え。今のツッコミ、貴方がしたの??? 目の前の人物にどう反応していいのか急に分からなくなっていた。 それ程驚く相手とは、いったい誰なのか。 「どうして、ここに……」 「どうしてもなにも、お前が呼んだんだろ!?」 「え?よん……ああっ!」 やっと思い出した。ここに来た時のあれでそれでヤバいと直感し、連絡していたのだ。 「ったく。呼んでおいてそれかよ」 だが、一番驚いているのは、お忘れの彼。 「年中不機嫌会長さんのフルスイングツッコミなりっ!?やばばっ!ウケるっ!!」 「あ」 「……」 異様に存在感があるはずの彼を忘れていた。いや、逆に今までその強い存在を感じられなかった。 ちょっとしたことが、何故か今は引っ掛かり、眉を寄せる。 「あばばっ雪くんに、ぶひっ!伝えねばんばっ!!」 「………ネジ」 「ねじ?」 「ネジ、外れてるどころの騒ぎじゃねえな」 引っ掛かりは気のせいだったと思う嵩音であった。 ××× 頭にネジなんて刺さってたら危ないでしょ! 自分で引っこ抜くスタイル。

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