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第269話(side:潤冬)
スマホに書かれていた緊急の文字にゾッとするほど嫌な予感がした。
それからはあまり記憶がない。気付いたら林の手前にいて、自分でも驚くほど慌てここまで走っていたらしく、息を切らしながら玲音を探す。あの時の二の舞にだけはするなと、強く思いながら。
すると黒い影が左端で動いた。ハッとし、直感する。あの速さはヤバい。
玲音ではない速さに焦る。あいつはどこに居るんだ!まだ見つけていないのに!
しかし予想に反し、影は俺の見逃していた体格のいいデカブツに向かい、次には、ぐあ!!と言う鈍い声を上げさせていた。
なんだ、あれは?
眉を顰め目を凝らすがハッキリと見えない。
黒い影はデカブツを1人倒しそのまま右へ真っ直ぐ進んだ。
どういう――――………ハッ!そっちにいたのか!!
玲音もいるのではないかと足を踏み出したが、近づくよりも先に ぐはっ!うがっ!と声がし、バタ……バタ……と2人倒れた。
それらに隠れていた人物が玲音でないと分かり、はぁと息を吐く。一安心し、ふと風紀に連絡をしていないことを思い出す。
パッとスマホを見れば、記憶にないながら竹ノ原に掛けた形跡がある。
我ながらに出来た脳をしていると感心した。
自分に感心していると、見覚えのある丸頭を見つけ声をかけた。
そして気付く。
なるほど。あの黒い影は味方だったのかと。
玲音と一緒にいたのは、いつの間に到着したのか3人を倒した時に見えた影と同じ靴を履いた、細身で長い前髪の……味方かと疑いそうな怪しい人物。
けれども親しげに話しているから、大丈夫なのであろう。
まあこのあと直ぐに玲音を連れて逃げられてしまうのだが。
×××
2m先まで見え、動体視力も抜群。
マ●イ族な所は王道譲りな男。
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