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第272話

君は、どこまでわかっています? 馬乗られ状態からなんとか脱却出来ないかと策を練っていると、問いかけられた。 「どこまで……」 「そう。生徒会や風紀委員、友だちのこと」 「うーん。何て言えば納得します?俺から今、確信を持って言えるのは一つ。貴方があることないことあの人に話している。それだけ」 「僕は誰にもなにも」 「それは嘘。彼も潤冬さんと同じで、ある人をずっと探してる。それは、自分を手当てしてくれた素性も分からない相手。最初に出会ったあの日、本当は俺に言ってたんだ。また違ったって」 「……」 あいつを信用していないわけじゃない。 でも、なにか引っ掛かる。 引っ掛かるけど、真意を掴めない。 逃げてしまいそうで本人に聞くことも出来ない。 だから彼は貴方からの情報を聞きながら、本当はずっと一人で探していた。 そうしてあの日、寮に帰るところだった俺に声をかけてきたんだ。どうしてか、懐かしい匂いがしたと言って…… 違います。否定するとまた違うのかよ。苛立ちを隠さず、でもなぜか首に腕を回してきて部屋まで歩かされた。 人違いだと何度も言った。 でも彼は、いいから来いの一点張り。 力が強くて抜け出せないから仕方なく着いていって、そしたら今度はベッドでぐだぐだ話しだす始末。 あの夜、3対1の喧嘩でボロ負けした。当時中学生だった自分はそこそこ力もあり自信があった。だけどその日の相手は全員大人。最初から勝ち目なんてなかったのだ。 動けなくなって地面に横たわっていたところを通りかかったその人に助けてもらったと言う。薄暗く、腫れあがった目では視界も悪くよく見えず、しかし今でも鮮明に思い出せることもあると。 スッとした柑橘のようなスパイシーな香りと腕に見えた特徴的な青緑色。それだけを頼りにーーー 「止めて下さい」 言い終える前に口を塞がれた。 「それを僕に言って、どうしろと?どうしてあることないこと言っていると?なに一つ関係ないのに、どうして……」 「んむごっ!関係大ありだ!」 無理やり手を口から退けて、声を上げる。 関係ないってなんだ?僕に言ってなんだ?どうしてってなんだ? 「あんたがグズグズしてるからだよ!」 「っ」 「あいつは!桜渚 雪は!あんたにお礼を言いたいだけなんだよ!!」 「………え」 予想外だったのか、どうしてどうしてと言いながら俺の胸に頭を押し付けて見えなくなっていた顔を勢いよく上げた。 どうやら、探している理由までは知らなかったらしい。 余計なことを言ったか? ふと思ったけど、俺に迷惑かけておいて余計も何もない。 そう納得した。

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