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第284話
その頃、一人林に残った彼、羽葉は入り込んだ奥の方まで歩いていた。
もう少し行くと林を抜け開けた場所に出る。
山の上にある鈴慟学園は、そこから街と空と海が見えて、晴れやかな世界が広がる。
えっちでうふ腐腐なBのLを探していた時にたまたま見つけた絶景スポットだ。
「むふふっ。あの2人、今頃セッススでえっちっちなことになってるんだろうなぁ」
最近流行りの単語を使い妄想を広げていく。
オタミくんはああ見えて襲い受けに違いないから、きっと自棄になって桜渚に跨がるんだよ。
桜渚も桜渚で今までに見たことない大人のエロスに鼻血出ちゃってあわわわって鼻押さえるの。
大丈夫?ってちょっと慌ててティッシュ渡すけど腰はぐちゅぐちゅ動かしててもうイクまで止まらない。
一回戦は、そのままオタミくんにされるがままで終わっちゃうのね。
でも、そこから桜渚の反撃がきて形勢逆転。赤毛のゴリラーーー
「ぶふぅっ!自分で言っておきながら赤毛のゴリラのたぎる目線って、パワーが強すぎる!!面白すぎて続きが入ってこなっ!!ダメだ!赤毛のゴッぶふっ!くはははっ」
見晴らしのいいそこで、羽葉はお腹を抱えてゴロゴロ地面に転がり盛大に笑っていた。
誰もいないと分かっているから、存分に転げ回れるのだ。
「ひーっ!ダメだ!せっかくの激熱展開が続けられない!!ぶひひっ、ひゃーっはははっ!」
「れ、ぉ……?」
「誰だよ赤毛のゴリラって初めに言ったヤツ!!ぶひゃひゃっ!もう、それにしか見えなくてしんど!赤毛のゴリラのたぎった熱をっ!……ゴリラのたぎった!!!ぶっ、ぅぐふっ、ゲホゲホ、変なところはいッ、ゲホゲホ……」
「ん、だい、じょ……?」
「くふっ、ケホ、んんっ!あぁ、もう大丈夫!しんぱい、し、ないーー……え?」
笑いすぎて噎せた羽葉の背中を心配そうに擦り、声をかけた誰か。
地面を見たまま体を丸め咳をしていた彼は、ふとそのおかしさに気づいて顔を上げた。
しかし横を向いて誰かを確かめる勇気はまだ出ていない。
一人だと思っていたのにどうしてか声と未だ背中を擦られている感覚があるでもあんな恥ずかしいことを言ってゲラゲラ笑っていた手前顔を確認したくないし恥ずかしいし知り合いだった場合余計に顔は見たくないし初対面でもキツいだろだって高校生にもなって転げ回って笑って噎せるなんてヤバいヤツだろあれでもこんなヤバいヤツの背中を擦るってことはこいつもヤバいヤツの可能性があるのではもしくは天使か女神さま……?
ここまで一息に脳内で考え、ふと大丈夫なのでは?とゆっくりと誰がいるのか確認をする。
え、無理。怖いんですけど……
でもきっと女神さまだから大丈夫。信じろ玲音。
斜め後ろを向くと、大きな体を丸め三角座りをしていた人物と目があった。
「あ……」
「れ、ぉ?だい、じょ……ぅ?」
「あ!はい!もう大丈夫です!ありがとうございます、枦椋 先輩!」
そう、心配して背中を擦っていたのは生徒会役員の枦椋 絢だった。
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