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第286話

「ッバッショ、ぅぐ!」 なんだなんだなんだ!? ちょっとだけ肌寒いなと感じた瞬間、くしゃみが出ていた。まあ、そこまでは良い。 だが、その後のことに羽葉は混乱していた。 くしゃみの途中で金縛りにあったように体が固まって動かないのだ。 どうしてか。それこそ縛られているように二の腕の途中からガッチリと固まっている。 なぜか今は最初よりもきつくなった気さえする。グイグイと締め付けられるような感じもする。 きっと、目蓋を開けてしまったら目の前には恐いものがいるんだ。 だって自分の息が跳ね返ってくるような、生温かく空気の籠るような感じがするから。目の前には壁みたいになった何かがべったりといる。これは妄想ではなく、ありのままを言っている。 考えられる選択肢は2つ。 1つ、見てはいけないこの世の生物ではない謂わばお化け的なもの。 2つ、BのLで良くあるモブ的なゴリラ的なヤバいもの。 「ガチガチガチガチガチ……」 どっちにしろビビりの俺に残されてるのは、恐怖。 出来ればこのまま気を失いたい。でも、心臓はうるさ過ぎて眠れないし逆に頭は元気だし体は動き出しそうだし。意思に反して体の上から下まで自分の言うことを全く聞きそうにない! なんならもう目も開いてしまいそうだ。ヤバい。ガチガチって幻聴も聞こえてきた。耳はあっという間に終了のお知らせだ。残る目蓋、そのままで良い。むちゃはするな。まだ開かないでくれ。最後の砦なんだ。 「ガチガチガチガチガチガチガチ……」 「……ぉ、さむ………?」 ひっ! 先ほど終了した羽葉の耳近くから「おさむ」という名前が聞こえ、直後、金縛りは強くなる。 恐怖は天辺まで達した。 はい。俺終了のお知らせです。身近い人生でした。出来ればもう少しBのLをここで堪能したかったです。 いや待てよ?人生終了したら未練で現世に残り、真の壁となり高校生達のちょっと激しいうふふふを見れるのでは?真の壁になりたいを実行できるのでは? ヤバい。興奮してきた。 いつからでも覗けるのでは?はっ!!気づいてしまった。 最初はもじもじ恥じらいながらお互いの服を脱がせ合う段階から徐々にその恥もなくなり事前準備をし相手を待ちしまいには今日したいと告げるという過程を全て見られるのでは!? ということは、ここからが俺の人生の出発……? 「れお……?」 「今良い所だからちょっと黙ってて!」 「ぇ……ごめ……なさ……ごめん、なさ……も、…」 「ん?」 なんだか別の意味でヤバい。というよりも「マズい」気がする。 未だに目は開けられていない羽葉ではあるが、なにかしでかしたことは、肌と耳で感じていた。 ××× 案外近くにある地雷。 踏み抜いたことに気付けるかが勝負。

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