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第5話
今日も仕事は山積み。忙しくて手一杯だと言うのに理事長様が編入生を迎えに行って欲しいと言ったのは5日前。何でも、自分の甥っ子で昔から甘やかしすぎて抜けているところがあるから、とのこと。
自分を含め生徒会のメンバーはいつも多忙と言うのは理事長様が一番分ってる筈で……
にも関わらずその合間を縫ってでも行って欲しいと言う。
他のメンバーは無理。の一点張りだったけど、ここのトップを務める理事長様がそこまでしたくなる何かに興味があったし、何より、自分たち生徒会のメンバーでさえ何度行っても採れない理事長様の秘書が作る編入試験を満点で合格したことが気になった。
誰かしらが行かなくてはならない、他のメンバーは行きたくない。ならば……
自分が行きましょう。二つ返事で答えれば理事長様はとても喜んでいた。
私も楽しみで仕方がないさ。
……どんな手を使って満点を採ったのか、この手で暴けるのだから。
学園は広く、正門までは車を使う。
ただ迎えに行く為だけに貴重な時間を割き、案内もしなければならない。本来ならば車だけ向かわせるのだが、甥っ子だからというだけで生徒会を動かすなんて、何もない訳がない。
考えている間に到着し車から降りれば、編入生の到着予定時刻ぴったり。正門脇にある扉を開け、久方ぶりに外でるが、相変わらずの景色が広がるだけ。
辺りを見回していると小さい丸頭は門の前にいた。
たぶんあれが編入生だろう。
黒い髪を風に泳がせ少し俯いている。
近づいていくが何か考えているらしく、こちらに全く気づかない。
遠目から観察することにした。
「まさか……登るのが、普通……?」
暫く眺めていればそう聞こえ、暴くも何もないただのアホだと分かった。
そうしたら可笑しくて仕方ない。だってあの理事長様の甥っ子の頭の出来が悪いとか。
自分の評価を下げる人物を入学させてどうするの?
もう引退したいの?
可笑しくて笑いが止まらない。
まあでも、そろそろあれを被ろうか。
私の可愛い猫を……
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