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第8話
「ねぇ玲音。どうしてこんな時期に編入を」
「え?あ…それは……」
んー、なんて言えばいいのやら。まあ1番はこれだな。
俺を腐男子にした姉に“あんた、腐ったんなら王道しなさい!時期外れ!高校に遅れていきなさいっ!”って理不尽な理由で家から出して貰えなかったことだな。
折角出会った王子様にこんな不純な理由、到底言えないからね。強靭な心は持ってないからね、俺。
「なんていうか。まぁ、色々とありまして…あはは…」
大根もびっくりな大根芝居だ。
これでも精いっぱいやったんだぞ!なんて笑えないよ!
「そうなんだ。私はてっきりー‥」
なんて暁胡さんが何か言いたげのタイミングで電話の着信音が車内に鳴り響く。
「話の途中で雅さん!……あの、出ても良いですか?」
暁胡さんは嫌な顔一つしないで「どうぞ」と言ってくれた。
迎えに来てくれたのが王子様じゃなかったらブチ切れだかんな!!雅さん!
「もしも「れおーん、今どこにいるんだい?迷ってないかい?ちゃんと迎えは来たかい?来るのが遅いから心配で心配で……」
「大丈夫だよ!雅さんは心配性だなあ。ちゃんと暁胡さんが来てくれたし、車で直ぐそっちに着くから!」
「そうか。彼なら安心だな。私の部屋までちゃんと送って貰うんだよ。いいかい、玲音」
はいはい分かった。適当な返事になって切っちゃったからまた後で大変だろうなって思いながら一息吐くために窓の外に目を向けた。
過ぎて行くのはずーっと木だった。なんも面白くないって???
うそでしょ!?だってあの茂みの中でもしかしたら高校生2人がちゅっちゅイチャイチャしてるかも知れないのに!!!
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