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第10話

「君はいつも手が早いんだよ。そして、痛い!」 頭を抑えた雅さんが反論するけど「自業自得です」とばっさり斬られてたし俺もそう思うよ、雅さん。 「いくら親戚だからと言え、そんなに自分勝手なことをしていると貴方、嫌われますよ?」 「うっ……」 「もしかすると、もう嫌っているけど言えな――」 「そんなことより玲音!久しぶりで立ち話もなんだ、こっちに座って話そう!!」 「「……」」 いやいや雅さん。いくらなんでも強引すぎるって。 呆れてため息ついてるよ?彰さんも。 それを言わないのは俺の手を引きながら嬉しそうにしてるから。もう忘れてしまったように見えたから。 嫌なことはすぐ忘れるタイプな雅さんだからこそ彰さんに何を言われてもめげることがないんだろう。 ん…?待てよ。二人きりの時に彰さんに甘えてるから今は何を言われて引きずることがないのか?ワンコ、攻め……?いや、雅さんが、受け……? なんなのこの高揚感わ!攻めだと思ってたのに更に強い攻め様にとろとろに甘やかされるなんて、まあ!羨ましい!! 俺の中のオネェが急にテンション上げてきたんだけど。俺全然羨ましくないのになんなの俺のオネェ…… 「西埜君」 「はい」 は!暁胡さんもいたんだ。これはめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!ここに来るまでに親戚だって言っちゃってるし、秘書には叩かれてるし!副会長様王子様の暁胡さんに知られるのやばい。恥かしい。もうまともに顔見れない。お嫁に行けない!! 「忙しい時にすまなかった、有難う。もう戻ってくれて構わない」 「はい。では失礼します」 キリって顔作ってるけど雅さん!さっきのアレはなくならないからね!!なかったことにはならない醜態だからね!! なんて思ってたら颯爽と踵を返す暁胡さんに慌てて声をかける。 「暁胡さん!有難うございました」 言うと今日一番のあまぁい笑顔とあまぁい声で「いいよ。またね玲音」手を軽く振って扉の外に消えてしまった。 王子様は最後まで王子様だった。

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