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第23話
「みんなぁ、紅茶さめちゃう…あ!きょーちゃん、お帰り!紅茶入れたから早く座ってすわって!」
「……リ」
チッ 投げ捨てるよう西埜から手を離しぞろぞろとカーテンの奥へ移動する。
上座にドカリと座るのは嵩音で、直後にスコーンを手に取る。
あ。今日はスコーンが食べたかったんだねじゅんじゅん!
鶴来は楽しそうに見てから嵩音の近くにクリームとジャムを置いた。
流れるようにそれらをたっぷりのせかぶり付き、指に付いたクリームを舐めると口を開く。
「で、どうだった?満点野郎は」
「満点野郎って、貴方…スコーンの食べ過ぎで、脳みそまでクリームになってるよ」
「あ?なってねぇよ。つうか、相変わらずうめぇな」
「でしょう!僕んちのシェフお手製だからね!」
挑発にノらない嵩音にアレ?と拍子抜けするが当の本人は美味いそれに腹も心も満たされ怒ってる場合ではない。なんとも高校生らしい姿が垣間みえる。
「で!そいつはどうだったんだよ!」
「んー、ただのバカ」
「ただのバカ?満点野郎じゃねぇのか?」
「だって、正門見て登るのが普通?とか言って見上げてたから。私、可笑しくて…」
思い出したのだろう。俯いて肩を揺らしていた。
「おい、昂科。資料」
「はいはい」
仕方ない。言いたそうに立つと言われた通りにあるモノを持って戻った。
はいと渡したのは個人情報で、勿論名前の欄には“羽葉 玲音”と書かれている。
「――小、卒 ――中、卒。親戚である浅羽理事長の推薦で鈴慟に進学を決意。秘書制作、理事長にも極秘である編入試験を全科目満点で合格し、その資格を得る」
「話し方も行動も見てて思ったけど、ふふっ。本当に何も詰まってない感じ。軽くて…」
未だ込み上げてくる笑いを抑えきれずにいた。
「「……」」
それを無言で見つめる影は2つ。
嵩音と、伊瀬。
「ねぇねぇ、編入生って、もう一人いるよねぇ、そっちはいつ来るぅ?」
「はっ(えっ)(はい)!?」
マイペースにお菓子を食べる枦椋を除く3人が一斉に声を上げ、両手でサンドイッチを持ちもぐもぐと可愛く食べている鶴来に注目する。
あれ?知らなかったの?大きな丸い目を更に丸くして首をコテンと横に倒す。
「この間、玲音君のお迎え行ってね!って言いに来た時に言ってたじゃん。じゅんじゅんに書類も渡してたよ?」
「……」
「……貴方ねぇ」
「さっさと見つけるぞ」
1時間かかったのは言うまでもない。
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