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第30話

「ふーん。篠田(しのだ)君にそんな歴史がね。他には何かないのかい?」 「って、委員長やないか!ビックリしたやん!」 「こんにちは。君とは初めましてだね、羽葉 玲音君。クラス委員の山成 恵(やまなり けい)です。君と同じクラスだからこれから宜しく」 彼も眼鏡をしていて、優等生という感じの大人びた見た目だった。少しばかり冷たい印象に見えるのは、一重のつり目に細身の眼鏡とスラッとした高身長だからだろうか。あとは、本当に冷徹なのか。 初対面で確かめる術はない。 「それより、僕にも彼の黒歴史を聞かせてくれないかい」 「んなもんもうなか!」 「あ、じゃああれだな。ヒロの寝言事件」 「早速面白そうな事件だね。なんだい?」 よう知らんがやめえ!大翔の声に全く動じず惺士は委員長に向かいあれは――と話し始めた。 賑やかな時間にとっぷり浸かる玲音は学食での王道を忘れていた。彼らも人なのだから、と言う大事な王道。 ここに来る直前までは覚えていた、待望のイベント。 “生徒会の休憩兼ご飯タイム” 割れんばかりの歓声の中、優雅に現れるであろう彼らの登場は玲音だけでなくきっと、全生徒待望の定期イベントだろう。 「で、その後ずーっと語尾ににゃん付けてんの!」 「…篠田君はとてもおちゃめさんですね」 「委員長、真顔はよして!そんなら盛大に笑われた方がましや!!」 だがしかし、来る気配のない彼らに、過ぎゆく時間に、今日は遭遇出来そうにはなかった。

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