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第35話
抵抗の前に触れてしまった。
腐男子、一生の不覚。
「ちょっ、まっふぅぅ」
あ、ちょっと苦い。タバコ吸ってるんだ。とか思ってる場合じゃなくて。
こういう時の抵抗ってどうしてたっけ??あ。噛みつく?待ってそんな暇どこにあるの??元ホストのチュー柔いしぬるぬるしてるし甘いのに苦いし…
気付けば彼の舌が口を割り開き、奥まで直接触れてた。
「ん、ちゅ、ふ…」
「した、真似してみ…そう。いい子だ」
「は、くるし…ん、ゅ…」
「泣くなって」
舌先から頭の天辺まで痺れて、お互いの間で纏められてる指と足元が震えた。もう寄りかかるしかなく、彼の言葉で漸く自分が泣いていることを知った。
「は…は…」
「真っ赤い舌伸ばして、足りないか?ん?」
「やだ…」
「これがやだなら、こっちは?」
腰の隙間からジャケットの中に手が入り、背中に回る。丁度良くベルトを締めたはずだけど簡単に通ったように思う。
「ぁっ」
「いい声。もっとして欲しいか?」
「ふ、だめっ…」
「ダメかぁ。まあ、ここじゃ無理だなぁ」
「ん」
耳に可愛いリップ音が響き、ゆっくり後引く声で「部屋、来るか?」囁かれた。
「……ダメです!!」
「っと。あれ?正気に戻っちゃったんだ」
ホストを突き飛ばして、自分はその場に座り込む。
あっぶねえ!もう少しで渡っちまうところだったぜ!片足は突っ込んでしまった気がするけど、セーフだ。
尻揉まれて気持ち悪さに戻ってこれたぜ。セーフ。
×××
妄想オチとか、ない。
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