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第39話
「うっわ!めっちゃうまっ!この甘さを俺は待ってた!パフェ最高」
「玲音、おまっ、鼻にチョコ付いてんで!食いしん坊か」
「さっきからなんじゃー!一言も二言も多いんじゃー!大翔なんかこうしてやる!」
「ちょいまちっ!真ん中取んなや!」
大翔は豚カツを頼んでたから、絶対に真ん中の美味しい所取ってやるんだって決めていた。俺の恨みは深いんだ。思い知ったか大翔。
「玲音、くん?食べもんの恨みは、怖いんやで…?」
「え」
「そのチョコパフェ食ったらあ!!」
「あ!ダメだ止めろぉ!!」
目の前で繰り広げられる争いに我関せずの惺士。陽向は呑気に「仲いいね」同意を求めていた。
「あぁ、まるで幼い兄弟みたいだ」
「本当に兄弟みたい。あ、でもどっちがお兄ちゃん?」
「うーん。身長差でヒロが兄」
「ひろ君がお兄ちゃんかぁ」
和やかな会話と目の前の騒がしさで彼らは気付いていない。
生徒で賑わっている筈の学食が可笑しいほどに静かであることを。どうしてこうなっているのかと言う、理由に。
「彼らのご両親はさぞかし、大変だろうね」
「手がかかって仕方なーー…」
聞き慣れない涼やかに通る声に振り向いて、惺士は珍しく固まった。
なんで。どうして彼が、彼らがここに。
にこりと笑いかけられゴクリと生唾を飲み込んだ。
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