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第43話
「…チッ 来て損した。俺は戻る」
「え、戻るの!?来たいって言ったのじゅんじゅんなのに!ねぇ、待ってよ」
「クソうるせぇガキ見て何が楽しいんだ、亜睦」
引き留める鶴来に一言いって再度体は入り口を向く。
歩き始めた直後、彼の横をスッと通り過ぎる影が一つ。身長は然程変わらない細身の眼鏡。
背を重ね、彼はこちらに真っ直ぐ向かっている。
「生徒会長さんは、見る目がないんですね」
静かな声だったがそれよりも静かなこの場所では広く響き渡り、それは彼の元にも届いていた。
「おい。今俺の悪口言ったのはどいつだ」
「あぁすみません。悪口に聞こえました?ただ、思ったことを言っただけなんですが」
「てめぇ…、ただじゃおかねぇ」
「はは、ただじゃおかないって、それこそガキみたいに幼稚な発想」
おっと。またやってしまった。
口を押さえるが明らかに今度は悪意ある発言に離れていた嵩音も戻って来て、そのまま彼に手を振りかざす。しかし避けることも逃げることもしない相手。ふっと笑い、それが更に怒りをかう。
嵩音!じゅんじゅん!
暁胡と鶴来が慌て叫び、周りの生徒も悲鳴を上げ騒めき立つ。
誰もがヤバいと感じた瞬間、それは起こった。
「はーい、そこまで。嵩音、拳をそいつに振り下ろした瞬間、お前は会長失格とみなし降格もしくは離職してもらうからなぁ」
パンパン。乾いた手の鳴りと共に響く鶴の一声。
学食が騒がしいと来てみれば…声の主は面倒くさいと態度に出しながら前にくる。
休憩中だからと緩めたネクタイは色気を増す道具にしか過ぎない。
本当に教師であろうかと疑ってしまう程に。
「月極か」
「先生を付けろと言ってるだろ、嵩音」
生徒会顧問である月極先生だった。
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