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第44話
てめぇも出てくんのかよ。嵩音は言うと掴んでいた胸倉を離す。尻もちを付く彼が緑色のネクタイをしていくことから一年生であることは歴然で、怖いもの知らずかまだ嵩音をよく知らないか。しかしあの口ぶりから後者でないのは分かる。
「マジ胸くそわりぃ」
彼は言うが、可笑しいと思わないか?昼休みの騒がしい時間に、しかもタイミングよく殴りかかる瞬間に、顧問の月極先生が騒がしいと言って来たんだぞ?こんな偶然あるのか?
確か、目の前の眼鏡は見る目がない。そう言っていた。まるで自分は何かを知っていると宣言するように。
ふと思い出し、嵩音の真似をして満点野郎、羽葉君を何気に見る。呆然とした。
大半の生徒が恐怖している為、彼もまた怖がっていると思っていた。しかし、違うのだ。
「物ともせず。って感じだね」
「ええ、一ミリたりとも怖がっていないですね。同学年の彼が殴られそうだったと言うのに」
「それは本当にバカだから?それとも、なに?」
「何かあるんでしょうね」
「ふーん。断言するんだ。なら、彼も何か被ってるってことか」
「もしかして、羽葉君に興味でも湧きました?」
まぁ、そんなところ。西埜は慣れた笑顔を向けて、輪から静かに姿を消す。
大変なことになりそうだと、彼をちらともう一度見れば、目が合ってしまった。反らされない視線に、なるほどこれは本当に何かありそうだな。自ら視線を外し、勘弁してくれと午後の仕事を考えこの場から立ち去る。
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