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第51話
「……」
テレビも点いてないし会話もない。居たたまれない。俺、何してんだろう。
「あの、一つ聞いていいでしょうか」
「なんだ」
「ここは一体…」
「俺の仮眠室」
「あ、仮眠室ですか」
だから寮より狭いのか。まるでホテルの一室みたいだなって思ってたけど。謎は解けた。そして、会話が終了しました。さっきからずっとご飯を食べる音しかしない。
空しい寂しい!美味しいご飯もなんか普通に感じてもったいない!
「あの」
「まだなんかあんのか」
「いえ、その…」
「はぁ…なんだよ」
手を止めてこっちに体を向けてくれた。でも、何も考えてなかったからそれはそれで困った。
じっと見られてるけど話はない。
「なんもねぇの?」
「あ、いや」
「んだよ、さっきから。言いてぇことあんならさっさと言え!」
「せ、せっかくの美味しいご飯、楽しく食べたくて…」
ガキかよ。
俺のそれに更に冷たい言葉が返ってきた。はいはい、どうせガキですよ。すみませんね。から揚げに箸をのばす。
「で、楽しくってどうすんだよ」
「ふへ?」
「てめぇが言ったんだろ!楽しく食いてぇって」
「え、え!えっと、それじゃあ、楽しい話しながら食べたいです!」
「話?例えば?」
うえ!?例えば?例えば…そう言えば、いつもどんな話してたっけ?
急に言われると分かんないな。今日のお昼は確か…大翔とご飯の奪い合いして、そしたら会長さんたちが来て…
「フハッ!ねぇのかよ。あんなに意気込んどいて」
「なっ!急に楽しい話って言われても思いつかないだけで!」
「おーおー、分かったわかった。ククッ」
「全然分かってないですって!!」
その後は特に居たたまれなさもなくなって、テレビを勝手に点けて、うとうと眠気と戦っていた。この頃には自分がどこにいるのか分からず、おいと掛けられた声になんと答えたかも覚えてない。
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