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第52話
いつもなら朝までぐっすり寝てる筈なのに、珍しく目が覚めた。
「のど…」
渇きを覚えて、月明かりの射し込む部屋を歩いてガコンと案外大きい音を立て冷蔵庫を開ける。
あれ、冷蔵庫ちょっと小さい…気のせいか…
冷蔵庫の中の光が眩しくて良く見えず、でもなんとか水のボトルを取って戻ると「みず…」なんでか声が聞こえ、しかし疑問に感じることはなく、飲みかけのそれを渡した。
暫くすると戻ってきたボトルにキャップをし、サイドテーブルに置いていると声を掛けられる。
「なんじ…」
「さん、じ…」
「…まだねてろ」
「ん」
頷くと腕を掴まれ、引かれるまま中に入る。暖かい中は気持ち良かった。足にも何か絡まって、少しばかりくすぐったいけどこれも心地良い。そしたら背中側まで暖かくなって、自分からもその暖かいモノに触れた。
包まれるように近づく香りに「あ、果物みたいでいい匂い」なんて首を伸ばし鼻を寄せる。
それがなんなのか、そもそも自分がどこに居るのかと言うことは頭からすっぽり抜け落ちていた為、快適場所として認識し、もう目を覚ますことはなかった。
翌朝自分の置かれた状況に混乱するだなんて今は思いもしないし、触れる温もりの正体に声なき悲鳴をあげるとも、夢にも思っていない。
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