56 / 291
第55話
何故か綺麗な俺の制服を着て、会長さんに持たされたお土産もとい「人が着た服は着たくない」と言われたパジャマの入った袋の振りながら階段を降りる。なんと言われてもいい。これめっちゃ着心地良かったから貰えて万々歳だ!
「あ。ここ?」
会長さんに言われ学食に繋がる扉から帰ることにした。もう一つの扉は校舎と繋がっているらしく、見つかると面倒くさいと言っていたし俺もそう思う。
昨日のアレはマジ取り返しつかないし、未だに違和感半端ないしでも会長さん怒らせてもあの場所は相手のテリトリーだし本当に手が早いし、結論言うと身の安全を優先させた。
嚙まれた手の痕は残ったままで、忘れたくても忘れられない。そしたらキスの感触とか撫でられた肌とか声とか諸々を思い出してしまい、見付けた扉の前で蹲る。
昨日は朝からツッキーに絡まれ、放課後は会長さんに……俺、普通に話してたけど、実際トラウマ級だから腐男子じゃなかったら今頃どうしてたんだろう。
ただ、平和な腐男子生活を送りたかっただけなのに…ってなんかフラグ付き腐男子BLの主人公みたいで怖いセリフを言ってしまった。考えてなかったけど、言いたくないセリフランキング上位だ、これ。怖い…
「なんで、俺…」
「おや。やっぱり人がいましたね」
「えっ」
キィと音がして、向こうから扉が開けられた。反射で顔を上げると見たことある…と言うか、学食のウエイターさんがいた。でも歳は他の人より上っぽくて、優しく微笑んでる感じも、もう何年もここにいますと言っているみたいだった。
「ふむふむ。ここにいるという事は、君はあの部屋から降りて来たんだよね」
「え」
「前任の子は、髪の長く背も高い子だったが、君は対照的だな。しかし聡明な顔をしている。後任も見る目はあるようだ」
「あの…?」
何を言われてるか分からず、けれど誰かと比べられていることは直ぐにわかった。
「ああ、すまない!こんなに早く人が現れたと知って興奮してしまった」
「えっと……?」
慌てる目の前の人に疑問は増える一方で。
なにより、この人はさっきからなんの話をしているんだろうか?
ともだちにシェアしよう!