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第63話
「オタミのくせに調子乗ってんじゃねぇよ」
「僕を殴れるようになってから言ってよねぇ?」
「チッ、クソオタミの所為で萎えた」
雪くん!呼び止めるがそのまま彼は出て行ってしまう。
え、待って。あのゴリラもといススグと呼ばれる不良とオタク…?オタミくん?合ってる?もう異色過ぎてキャラ濃すぎて着いて行けないんだけど誰か丁寧な説明をよろしくお願いします。とは言え、ここには俺とそのオタミくんしかいないんだけど!
「もうホントなんなんだ!なんでみきたんまで酷いこと言われなきゃいけないんだ!?みきたんに謝れ土下座しろ下半身ススグ!!」
扉に向かって叫べば「てめぇが土下座しろ変態オタク!!」と返って来てあ、隣にいるのか。出て行ったかと思った。なんか思ってたのと違う。なんて考えていたのは秘密だ。
「……あの…決着しました?」
「あ!君のこと忘れてたごめぇん」
ですよね。なんとなく分かってました。可愛くごめんって言われても所詮男ですし全然可愛くないですし。何故こんなにも俺が冷静なのかってもう逆に怒りとか悲しみとかなく、早くこの場から立ち去りたい平穏な学生生活送りたい今日のことを忘れたいと思っているからです。
「俺の腐男子満喫生活を返せオタクとゴリラアアア!!」
「うぶグフッ!たぶんだけど君、思ってることと喋ってることが逆になってるよっ!うぶふっ!」
「……」
「ねぇねぇ、もしかしなくてもゴリラって雪くんのことでしょ?ピッタリすぎてぶふっ!笑い止まんない」
サァァと血の気が引いてくのが分かる。分かりたくないけど、分かる。
人ってこんなヤバい時ってこうなるんだね。小説より奇なりって本当なんだね。今痛いほど身に染みてる。
「どうしようって顔してる。ぶふっ!大丈夫だよ、僕、君にはもう何もしないし」
「え…」
「雪くんに攫われてきた君!名前は?」
急な質問に体を起こしながらえ?と彼を見ると「僕は和民 、1年生でっす!」なんて自己紹介される。大人びて見えたのに同級生だったんだけど。人間怖い。俺、同じ人間、違う。俺、これから、伸びしろ、ある。
伸びしろ、ある。身長、伸びる。
「君は?」
「……1年の、羽葉 玲音です」
「おお!君があの編入生、玲音くん!雪くんの他にもう一人増えるって言ってた特待生の玲音くん!」
「ん?」
なんか今、聞いてはいけない単語が聞こえた気が……
いやまさか。たぶん空耳か何かだ。
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