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第64話
「それにしても災難だねぇ。編入したばっかで雪くんに捕まっちゃうなんて。いやぁ本当、大変だよ。あんなことまでされて、あの雪くんのこともゴリラって叫びたくもなるよ。わかる。例え雪くんの噂知ってたとしても、僕も叫んでたと思う」
何も言わないのをいいことに和民君はマシンガントークを止めない。ねえ待って。今また聞いちゃいけない言葉を聞いた気がする。
「ところで玲音くん!君はみきたん好き?」
「急に!?今までの重要そうな話しはどこへ!?と言うかみきたんってどちらのみきたんですか!?」
「ワァオ。いいツッコミきた。ひろきくんみたいにキレが有っていいねぇ」
「ちょちょちょっ!登場人物をこれ以上増やさないでくだ……ひろき君みたいなツッコミ?」
まあ、待て。落ち着け俺。ひろきなんて名前は世の中に大勢いる。このヤバそうな人が俺の知ってるひろきを知ってるわけない。だって俺の知ってるひろきは生徒会の役員なんだぞ?
さっきのもっとヤバいゴリラとつるんでる和民君が知ってるわけない。うん。絶対違う人だ。
「うん!篠田大翔くん!」
「はいおんなじひとおお!」
顔を両手で押さえながら後ろに倒れる。ベッドだから痛くないけどこのまま帰りたい。出来れば土に還りたい。泣いても良い?大翔助けて。
「玲音くん、どうしたの急に。眠い?寝る?」
声と共にベッドがギッギッと音を立てた。
「ひろき君が、俺の知ってる大翔でびっくりして」
「うん」
「みきたんも、誰か分かんないし」
「うんうん」
「あの、とか噂、とか知らないし」
「うんうん、それで?」
色んなことがありすぎるし甘い声だし自分が誰といるのかどこに居るのかもうぐちゃぐちゃで本当に泣けてきた。
「もうヤダ。疲れた。頭パンクする…」
「そっかそっか。疲れちゃったかぁ、よしよし。僕の胸においで。なーんて、お?」
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