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第72話

編入生、哉芽君を寮まで案内し寮長さんたちと話をして、部屋の階が一つ上だと知って、また明日と言って別れた。 「ただいまぁ。陽向、俺なんか知らないけどもう一人の編入生くんここまで案内してきた」 「おかえり、玲音。案内して来たの?お疲れさま。お茶飲む?」 「飲む!でさぁ、その編入生、哉芽君て言うんだけど、全然喋んなくてめっちゃ焦った!」 「全然なの?はい、お茶」 カップを目の前に置かれ、ありがとうとそれに手を伸ばしながら「いや」話を続ける。 そうそう。会話ってこうやって続いていくんだよぉ。また感動を噛み締める。 「何聞いてもあ、はい。しか言わなくてさぁ」 「初めて会ったから、緊張してたのかな?」 「は!確かに。そうかも知れない」 身長は高かったけどモジモジしてた。もしかしたら見た目通りのコミュニケーション能力なのかも。俺がグイグイ話すからきっと心を閉ざして…そのまま誰とも話さなくなってしまうかも。 はっ!前の学校でも誰とも話が出来ず、あんな感じの態度で。だから酷いいじめにあって、編入を?折角新しい学校に来たのにまた話せなくなって皆からいじめられて、編入…? 「そんなのダメだ哉芽くんんん!!」 「玲音、いきなりどうしたの?」 「おおお、俺の所為でまた編入したらどうしよう」 「え?なにかしたの?」 「分かんないけど、なにかしちゃったかも知れない!!」 なにしたか分からないならきっと大丈夫だよ。 そう言ってくれた陽向に本当に?哉芽くん編入しない?と泣きついたのは言うまでもない。

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