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第73話
「本当にいなくならないかなぁ…」
未だ引き摺りながら扉を開ける。気付いたら6時過ぎで、夜ご飯どうする?陽向に尋ねられ、丁度惺士たちも来たからごめんと謝り俺はここにいる。
はぁ…いい匂い。夕飯時だから色んな美味しい匂いが混ざって、俺もお腹空いた…
「うん?こんな時間にどうしたんだい?」
「あ。高橋さん!」
「今は忙しくてゆっくり話せないが、休憩室にいてくれて構わないならね」
「あの、話に来たんじゃなくて、ちょっと上の階に用事が…」
「もしかして、3階に用事かい?」
珍しく驚いた様子の高橋さんにはいと頷き「こっちからの入り方しか知らなくて」最初にここに来た時の扉を指差す。
「なるほど。羽葉君、夕飯は食べたかい?」
「これからです。お腹ぺこぺこです…」
「2人で食べるんだね。好き嫌いはあるかい?」
「ないです!しいて言えば甘いのもが大好きです!」
アハハ、俺の言葉に高橋さんは大きく笑って、それから、すぐに君たちの分を作って持って行かせよう。待っていなさい。と言い厨房に消えてしまった。俺も部屋に向かう為、仕方なく扉の中に入る。
エレベーターないのかなぁ。上がるの面倒…ゆっくり上がって、漸く着いた。鍵はやっぱり閉まっていたけどさっき貰ったそれで開けて勝手に部屋に入る。これを渡されたってことは、そういう事なんだろう。
「誰も、いない?」
ソファにもベッドにもキッチンにも人の気配はなくて、まだ仕事が終わらないのだろうと部屋を歩く。テレビを点け、ご飯と会長さんを待つしかない。
「さて、どっちが先に来るでしょうか」
どこかの司会者みたく言ってみる。誰もいないから堂々とできるのだ。
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