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第75話

「あ、の、おいしい、ですか…?」 「普通」 「まぁ、普通においしい、ですよね」 「……」 え?なんで食べたし。いやまぁ、食べるように向けたのは俺だけど。なんで食べた?人の話しは聞かない自分中心を生きる正に王道何様俺様のジャイアニズム会長さんが、なんで、俺のつまんだハンバーグ食べたし。 これ、夢?まさか俺の夢オチ?だからあーんして食べたの?と言うかさっきの……はい、あーんって語尾にハート付くやつじゃん!なにしてんの、なんなの俺の夢!勘弁してくれよ! 「なんだよ」 「いえ、夢から覚めたいなと、思いまして」 「は?寝言は寝て言え」 「なんですと!?いくら俺の夢だからってひどい!」 「だから、寝言は寝て言え。お前本当はバカなんじゃねえか?満点」 「俺はバカじゃ――え、これマジで現実…?」 何回も言わせんな。イライラした声で言ってきて、え、マジでマジな現実?マジなの?ってちょっと信じられそうにない。 「え、でもだって会長さん…俺のハンバーグの、箸で…あーん…」 「それは!」 叫んだ会長さんは直ぐに顔を背けて、らしくない小さい声でボソボソと、でも俺には十分な程聞こえる。 「それはお前が楽しく食いてぇからって…」 ん?えっと…?もしかしてだけど会長さん、それは先回俺が、せっかくの美味しいご飯なんだから楽しく食べたい!と訴えたことを言ってる?でもって今日、楽しくイコール俺からのあーんを受け入れる。に行きついたってこと?あってる?そうなの?どうなの?マジなの? 耳まで赤くなってるのは、そういう事なの? 「あー、クソッ!なんとかっ、い」 「え…うれしい……」 「っ」 王道会長じゃなーい!幻滅!!とか、恥ずかしいの我慢して頑張ったね可愛い!!とか、色々あったのに、口から出たのは全然違う単語だった。 会長さん、俺の言ったこと覚えててくれたんだ。 でもって今日は実行してくれたんだ。それでいっぱいになってた。

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