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第78話
「飯、また冷めたな」
「パフェも、ちょっと溶けちゃいました」
「ふ、ははっ。何してんだろうな」
「あひひ。なんでしょうね?でも、楽しいからいいんじゃないですか?」
俺のそれに「ああ」潤冬さんは口元をまた緩めて頷いた。
「それはいいとして。玲音、お前今どこにいるか分かってるか?」
「え?……あ!すみませっ!」
無我夢中だったから忘れてた。飛び乗った先は潤冬さんの膝の上で、指摘されなければ暫くここで話でもしていそうで、慌てて降りれば今度は待てと言わんばかりに手を掴まれる。
そうして膝の上に逆戻りした。
「このまま少し、良いことしようぜ」
「良いことって――」
「んなの、体が気持ちいいことに決まってんだろう?」
さっきとは打って変わってじんわり広がる熱っぽい声で耳打ちされて、あからさまに体は強張った。それなのに顔は熱くなる一方で、正面も向いていられなくなり下を向く。
「恥ずかしいんだ?……興奮する」
「っ」
「どうする…?またキスからするか?それとも、俺が、一枚ずつ服脱がせてやろうか?」
「っ、ゃ、です……」
じゃあ、何からする?
腰も抱かれ動けなくなって、耳元で話すから聞こえないフリも出来そうにない。
選択肢は思いつきそうにないし、八方塞がりだ。
「な、なにもできな、あ!っぅ」
「言わないと、俺の好きにするぞ?」
ガブリ。耳に噛みつかれ上げた顔のすぐ近くに彼もいて、どうしようもない熱に浮かされ、もうどうにでもなれ。ギュッと目を瞑って自分から口に触れた。
柔らかく少し冷たく感じたそれは思っていたよりも生々しくて、直ぐに後悔した。
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