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第79話
パッと一瞬で離せば「バーカ、ちげぇだろ」今度は相手から近づいた柔らかさ。その次には俺の唇を巻き込んで開き、奥からぬると舌が触れる。
まだ冷静な頭が恥ずかしいと訴え後ろに頭を引くけど気にした様子なくついてくる口になす術はない。
「ふっ、ぅぅ」
「れお…」
「っ、は…」
「なんだ、強張ってんな。今日はキスじゃノれねぇって?」
息ばかり上がって辛く、潤冬さんが何を言っていたのか聞き逃した。
今、なんて?聞く前にアイスの溶けるパフェを持たされ、スプーンで掬いそれがこっちを向いた。
えっと…俺が食べるの?いや、頼んだのは俺だけど。このタイミングで?
あのまま無理に押し進められると思ったから拍子抜けと言うかなんというか…どういう事??
「いらねぇのか?」
「え?いただきます…?」
パクリ。食べるとフレークはちょっと柔らかくなってて、でもそれも好き。すぐに飲み込んでしまってもう一口食べたい。思っていれば「ほら」スプーンがまたパフェを掬う。あむと口に閉じ込め噛みしめるとじわり甘みが染みでていっぱいになる。
やっぱり美味しいものはどんなになっても美味しい。
「もう一口、食うか?」
「ください!」
まぁ良く分かんないけどくれるからいっか。何がいいかも分かんないけど。
差し出されるそれを何度も口に運ぶ。はぁ、パフェ美味しぃ…
「ふ…そんなに美味いのか」
目を細くして見てきて、俺ばっかり食べてんじゃん!初歩的なミスに気付き、どうぞパフェの器を潤冬さんに渡そうとしたら逆にスプーンの柄を向けられる。
えっと?もしかして、自分にもしろってこと?
何も言わずそのまま動きそうにもない。迷ったけど受け取り器から溶けた中身を掬いはい。近づける。
「ん、あめぇな」
「もう一口、いります?」
「もらう」
甘いと文句を言う割にはスプーンを綺麗にする彼に次はつぎはと繰り返し、遂には何も掬えなくなった。
「あ。もうない」
「うん?全部食っちまったか?」
「はい。もうちょっと、したかったな…」
「なんだ?食えなくなって残念なんじゃねぇのか?」
問われ、食べさせるの楽しかった。そう言ったら何故かポカーンと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をされた。
俺、変なこと言った…?
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