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第82話

「くるし…」 何もしていないのに、もうやらないと言われたのに、喉の奥が閉まるみたいで苦しい。背中の布を掴んで肩に頭を乗せて、そしたら香水の匂いが体に沁み込んで来て、今度は泣きそうで… ちゃんと呼吸出来るのに苦しい…やだっ。もうやだ。 なにがどうして嫌かも自分では分からなくて、考えが纏まらなくて、指にばかり力が籠る。 「お前な、やだやだ言う割に俺に引っ付きすぎだから」 「だっ、て…自分でも訳わかんないんです。もうやだ…」 「頭いいくせに、かてぇなあ?んな中身のねぇもん考えるだけ無駄だ」 「でも知らないうちに考えちゃって…」 はぁ…わざとらしいため息を吐き、次には顔を上げろと命令してきた。 「なんで…んぅっ!?」 不意打ちに合わせられ、腕を突っ張る。 「も、もうしないって!!」 「やらねぇよ。キスだけだ。何も考えたくねぇんだろ?なら、俺とのキスだけ考えてろ」 突っ張ったままの体勢でおら、と顔が寄って、本当にもう悩まなくて済む?考える前に腕の力が弱くなる。 「いい子だ」 「あっ!んんぅっ」 触れるだけで終わるなんてことはなく、後ろに引くより先に後頭部を手が押さえて相手の舌に自分のそれも捕まった。 「っ、ぅふ、んンッ…!」 お互いの間でぴちゃりぴちゃりと鳴ってさっきと違って抵抗出来ない。なんでなのかも考える余裕がなくて呼吸するので精一杯だ。 「は、ンぅッ、ふっァぅッ」 「れお…もっと、そう…」 くちゅ、ちゅ、真似をして舌を伸ばす。唾液が顎から喉を伝って流れ、でも気にならなくて…というよりキスに必死で気付かなかった。 「ちゅ、ぁ…」 「物足りないか?」 「ぅぁっ」 鎖骨の辺りからゆっくり舐め上がって来る舌に顎も上がる。 顎も舌も頭も痺れて、力、入んない……

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