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第87話

「ぁ、はぁ……」 ずるん、動きを止めたそれが漸く中から引き抜かれた。起きていることも掴むことも何も出来そうになく、潤冬さんに抱き寄せられなんとか上にいられる状態で。命綱はこの腕だけ……略して命腕。なんてくだらないこと考えてた。それにこの命腕の中、温かくて居心地がいい。 あ。汗で髪の毛が首にくっ付いてる。どんだけ必死にやってんの?思うも腕はまだ動きそうになく、ただ見つめることしかできない。 はぁ…なんでまた、こんなことしちゃったんだろう… 途中までは抵抗できたのだ。しかし、今に至る。一体何がどうして自分は……でも、だって。出てくるのは言い訳で、それも認めたくないものばかり。 だって、潤冬さんの声、優しくて……なにより、俺の方を向いてた。そしたら、何も出来なくて。 どうしたってダメだったことを、彼は簡単に行った。あの頃も、あの後もダメになったのに、なんてことない今日、それをされた。陽向達もそうだけど、でもきっとって信じられなくて…… 「あー、体いってぇ」 「え」 「こんなとこでやるもんじゃねぇな、クソ」 「わっ!ちょっ!!」 起き上がり何故か俺を担ぎ上げ歩きだした。待って!ここはお姫様抱っこが王道!!いや、俺がされたって意味なんてないんだけど。え、人のこと米俵か何かと勘違いしてんじゃないか? 落ちて行った思考を一瞬で吹き飛ばされ胸の奥でホッとした。 あのままだったらきっと、もっと悪い風に考えていたと思うから。 「あ、の…このまま寝るんじゃ…」 「は?何言ってんだ?今度は正常位でやるに決まってんだろ」 「えっちょっ!無理ですって!!」 分かったわかった。そう言って膝の裏を持ち上げた。 って、全然分かってないからなそれええ!! 風呂にでも連れてってくれるのかと思ったら何故かベッドに投げられ自分も乗り上げて、さっきの会話に至る。 ねぇちょっと待って!こういう王道はいらないしマジ絶倫鬼畜とか現実では迷惑だから!俺の体力知ってる?もう限界突破したから!いいから俺の上からのけええ!!

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