「ひぃろぉきぃぃ！」 「んー…」 「起きろお！ご飯だよお！お昼だよお！ひぃろぉきぃぃぃ！」 どれだけ揺らしてもむにゃむにゃ訳わかんないこと言って全くて起きる気配がない。今朝からずっと舟漕いで眠そうだったけどいつものことかと思って何も言わないでいたら３限で遂に突っ伏し、起きてまた寝るを繰り返し、現在こんな調子です。玲音です。以上です。 「あ、と、２０時間……」 「分かった。あと２０じかん……って、成長期終われ！！」 『寝る子は育つ』を目の前で実践しているようでイラっとした。お腹空いて短気になってる気もする。 と言うか、俺だってめっちゃくちゃ寝てるから。なんなら寮のソファでも寝てることしかないから。なのにこのしんち……ええいっ！赤毛縮め膝から下ちょん切って俺にくっ付けてやる！あと、どうでもいいけど早く起きろコノヤロー！！昼ご飯くいっぱぐれたらお前の所為だからなぁ！！ でも優しいからめいっぱい振りかぶってます！玲音です！ パッシーンと良い音が鳴りましたとさ。めでたしめでたし。 「い？えっ！？なん！？何が起こったん？？頭めっちゃ痛いんやけどなんなん？隕石でも落っこちたん？？」 ペタペタ自分を触って異常が無いか確かめる大翔がマジな顔してるし何か落ちてないか教室を見回してて必死過ぎるのなんで。もうこれ笑いを取りに来てるでしょ。ワザとでしょ。 「ぶふっ！あ、やっべぇ」 「なにわろてん」 スッと全てを察知してように急に静かにこっちを向いた。 「わ、ワロてんないよ？」 「……」 「……」 たっぷり１０秒。いや、１２秒俺たちは見つめ合い、探り合い、頷き合う。 寝ぼけた大翔は分かってない。うん、大丈夫。何もわかっていな―― 「お前！俺の頭叩いたやろおお！！」 「ひええっ！つい出来心ですすみませんごめんなさい申し訳ないいい！！」 「反省したか？」 「したした！超した！めっちゃ今もしてる！！」 頭を下げながら手を擦り合わせ拝むように何度も謝る。そしたら、まあ許したる。って許してもらえた。 「大翔チョロすぎ…」 「ああ？なんかゆうたか玲音？」 「なんでもございませんっ、めっそうもございませんっ！ワタクシめ貴方様のことを何か言うなんてとんでもございません！！」 うそ、ゆうとらんな？ 今度もまたじっと見つめられ見つめ返し、そして、頷く。 「あほんだらあ！全部聞こえとんじゃこの野郎！！本体の眼鏡指紋まみれにしたらああ！！」 「うひゃっ！眼鏡はやめろぉぉ！！」 レンズを指で掴もうと手を伸ばされ慌てて仰け反り死守。と思ったら椅子から立ち上がる暴挙に出て触ろうとして俺も手でそれを払い退ける神的瞬発力。もう勝ったと思ったね。確信したね。ふ…… ××× 喧嘩をするとお腹が空くではなく、ご飯を忘れる。