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第91話
何故ならそう!めちゃくちゃ影薄く……と言うかなんかしっくりき過ぎて違和感のない、そう!!槇野君が一緒にいるからです!!
ツッキーの粋な計らいで、しかも俺の名指しで昼ご飯も昨日同様に教えてやれーと。鼻息荒くえ!いいの!!って言ったら引かれたんだけど。マジ解せない。
「ここが!学食だよ!槇野君っ!!」
「あ、あの、はい」
「どう!?感想は!?」
「えっあの……広いですね…?」
「え、そーー」
おっと危ない。それだけ?って言いそうになった。俺が変なこと言って槇野君がハブられていじめられてまた転校とかになったらイヤだ。絶対にイヤだ。もうそんな酷い思いはさせないよ、槇野くん。
そんな事実もないのだが……
この数日のうちに俺も慣れたもんで、皆がメニューを決めたであろう良いタイミングで軽く手を上げ落ち着いた大人の声を作りウエイターさんを呼びとめ
「そこの兄ちゃん!注文頼むわー!」
「ズコ――ッ!!今は俺のターンじゃないの!?」
「なぁしてん玲音。てか、ズコ―って古すぎやろっ!何年前の化石やっ」
気を取り直して。
オホン、一つ咳ばらいをしてスッとウエイターさんを見上げ静かに口を開く。
「すみません吉田さん。この赤毛のバナナがとてもバナナでバナバナバナナン、ブフッ」
失敬しっけい。少し冗談が過ぎました。
「アハハ!」
「え?」
「ごめん、キャップと話してるキミしか知らないから…そんな冗談も言えるんだな」
わ……裏の通路で挨拶するくらいで冷たそうなお兄さんとしか思ってなかったけど、こんなに楽しそうに笑うんだ。一切笑わない人かと思ってた。
全然冷徹美麗じゃないじゃん。ただの綺麗なお兄さんじゃん。
ごちそうさまです。
「ハハッ、今度はご飯もないのにもう手合わせて、食いしん坊?キャップにも言っておくな」
「ぁっ、ちょっ!それは俺の株が下がりそうでっ!勘弁してくださっ」
「株とか知らないし。つうか、食いしん坊って知って逆に喜びそう…やっぱり秘密にしとくは」
「んっ!!」
なんすかその笑顔。
なんすかそのイケ兄の楽しそうな笑顔はあああ!!
もうこのままお布団に入って眠りたい。柔らかい温かいお布団に包まれて永眠したい。綺麗なお兄さん、しゅき……
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