扉を３回ノックする。間隔を開けずに鍵は空いてると返事がされ、静かにノブを回し開ける。料理のお盆を持ってるから少し入りにくく苦戦し、漸く体を中に押し込んだ。 「今日はやけに時間かかって……は？」 「あの、すみませっ！お盆持ってたら開けにくくて」 「そりゃそうだろ。いや待て！なんでお前がいるんだよ！」 確かに。俺は教えてもらったけど彼はここで注文しているし世間話なんてしないだろうし、まして俺が学食にいたことも知らないだろう。急に現れたらビビるは。俺なら心臓出る。 「ちょうど俺も学食にいまして、そしたらよしだ――ウエイターさんに上に貴方がいるって聞いて、ついでにご飯も持って行ってと言われました」 「……理解はした。ちゃんと飯頼んでんだろ。もう帰れ」 「えっ！」 「んだよ。まだなんかあんのか」 「いや、その…特には……」 ならばもう帰れ。一言の圧力に仕方ないか。話すこともないしただご飯食べてるところを見られても食べづらいだけだ。座りかけたソファから玄関に移動する。 どうしてか分かんないけど凹んでる。 陽向に夜だなんて言わなくてもよかったな… タンタン小さく響く足音になんでか分かんないけどため息も出た。 「あれ？もう降りて来たんだ？」 「吉田さん」 「なに、怒らせた？」 「怒らせるなんて危ないことしませんよ。今日は忙しいみたいで、帰れって言われただけです」 なんだ残念。優しい吉田さんにそうですねなんて返した。気分的に授業にもあんまり出たくないけど、本分は学生だから仕方ない。じゃあまた来ますね。付け足して裏口に足を向けるとちょっと待って呼び止められた。