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第103話
一瞬で荒れすさんだ俺の心を知らず、羽葉君はどうしてここに?槇野君が珍しく質問してきた。あ、なんか分かんないけどお母さん、成長を見ている気がする。一ヶ月もう打ち解けて自分から質問もできるようになったのね。俺、お母さんじゃなかったけど。
「俺?んー…ここに来たのは、理事長が俺の親戚だったから、成り行きに任せた感じ」
「成り行き、ですか?」
「うん!槇野君はどうして?もしかして俺と同じで親戚がいるとか?」
「親戚…ではないですが、あの……」
足を止めた槇野君に自分の足も止まる。
「ん?どうかした?」
「……俺も、成り行きです」
「そっか!まあ高校決めるのなんて、学力と成り行きだよな!」
「ええ、そうですね」
絶対何か言いたそうだった。でも言わなかったのは、気付いてもまた地雷だったらどうしようと聞けなかったのは、まだ俺たちにそこまでの信頼も、ちょっとの勇気もなかったからだろうか。
ガララ、遠慮なく開けた教室の引き戸は意外に大きく音が立って、でも中には誰もいなくて安心した。俺なら失神してたくらい響いたんだ。
「あ、あのっ!」
「どっどうした急に!?」
「俺も、レオンて呼んでいいですか?」
「もちろん!と言うか、もっと早くいってよ!俺もずっと槇野君じゃヤダなって思ってたんだ!哉芽って呼んでいい!?」
そしたら見えた口だけ笑い静かに頷いた。なにその急な年上感!!様になってて良いよう!!目元は全然見えないけど。でもどうせ哉芽もイケメンなんだ。この学園は綺麗格好いいしか入学できないんだ。じゃあ俺は?あ、理事長の親戚だからか。
悔しいですッ!!
「レオン」
「くやっ、なに?」
「レオンに会えてよかった」
「……?なんだよいきなり!でも俺も、哉芽に会えてよかった!」
サインクダサインも頑張ろうな!って続け、その後は俺は自分の席に、哉芽は大翔の席に座って夕飯時になるまでずっと喋ってた。
いや、途中でこんなに喋りっぱなしで女子か!?って叫びそうになったね。しかも何回も。
マジで女子かよ!?
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