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第119話

「来るのが遅いから心配したじゃないか!何もなかったかい?怖い思いはしなかったかい?変な野郎に手は出されてないかい?」 理事長室に入った瞬間に駆け寄って来た叔父の雅からの怒涛の質問責め。笑っていたのが夢だったように玲音から表情が飛び、しかし最早逆に冷静過ぎて笑えると今度は静かに肩を震わせていた。 床を叩いて笑っていたあの時、スッと影が落ちてきて、共に入って来たのはピカピカに磨かれた革のストレートチップ。 落ち着いたデザインでうおお!できる大人の足元!とテンションを更に上げていたのだが、それこそ凍えそうな程に落ち着いた大人の声で何をしているんです?氷柱が降った。 「「……」」 冗談を言って場を温める。なんて思っていたのだが全く出て来る気配はなく、それは隣の月極も同じようで、仕方なく2人して只々氷柱の先を見上げた。いつもより瞬きの回数を増やして。 無表情よりも怖いものは存在しない。そう思ってしまうくらい冷え切った表情で見下ろしてくる秘書の彰を。 「早く行きますよ」 「っ」 「お、おら!早くしろ!羽葉」 慌てて立ってスーツを直してたけど絶対アウトだったからなツッキーも!彼は言いこそせず、しかしながら態度はありありとしていた。そうこうして漸く着いたが彼に待っていたのは先のアレ。 全部経験しましたが?首まで出かかった言葉をなんとか飲み込むもそろそろいっぱいになりそうだった。 「理事長、玲音君が痛がっていますが」 「は!そうだったな」 「……」 「羽葉?」 理事長らの会話に全てを理解したのか、やはりと確信をしたのか。どちらにせよ呼ばれた理由は生徒会長にバレたことであろう。 ××× 結果、昨日は3階には行っていない

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