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第121話
「見えたっていうのは、カメラを見ていたからかも知れない。でも、生徒会は忙しそうで…」
「憶測はいらない。君自身がどう思うかだ、玲音」
「俺…?」
事実の確認はしないでいいのかと思うも、少し黙り込み、ポツリと落としたのだ。その声は編入してから聞いたことがないほど元気なく小さく、気弱なものだったと月極は後に思い返す。
「潤冬さんは、そんなことしない」
「理由はあるかい?」
「え、あ。上手くは言えないけど!でも見て見ぬなんてしないって俺、信じたいっ」
「羽葉、お前…」
「なるほど…よし、分かった!今回の件、彼の話は気付けなかったことへの後悔とする」
処分はなしだ。その言葉に一番喜んだのは月極だった。嵩音の家が名家であると言う贔屓や私欲などではない。まして彼を非難していたわけでもなく、ただ、嵩音の今日までの努力や傲慢な態度の先を知っているからこその願い。それだけ。
「潤冬さんの処分はないけど、他の人はどうなるの?」
「彼らの映像はしっかりと残っているから、それ相応の処分になるかな」
「退学ってこと?」
「最悪はそうなるよ」
黙り込む彼にパンッと一つ手を叩き、これで話しはお終いだと雅自身がソファから腰を上げた。それに習い月極が立てば仕方ないと彼も立ち上がる。
退学か…ポツリと呟いた彼は部屋から出ていく直前に雅に向かい、コツンコツンと言葉を置いた。
「雅さんも、冷たいね」
飲み込もうとしたが一杯いっぱいで無理だった言葉だった。
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