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第125話
「っうお!?」
明るくなった直後、雄々しい叫び声が。誰かなんて分かりきっているし驚かせようとしてたからこの声は大成功なんだ。何事もなかったようにお帰りなさい。なんて相手に向かって言えば、信じられないとでも言いたそうに視線を向けられ、ゆっくり10秒数えられそうな程間を開けて、ただいま。律儀に返してきた。
「プファルツっ!驚きすぎでしょっ」
「……いや、急にドイツ南部地方のこと言われても」
「そうじゃなくて!」
え、なに。気が動転してるの?だから返しも変なの?それとも元からなの??
元からとなると大丈夫?この人に任せて大丈夫?不安しかないんだけど生徒会長さん…
なんて考えたけど、俺の笑い方に真面目に返してくる感じだから、なんか大丈夫なんだと思う。全然大丈夫な要素見出せなかったけど。
「もう来ないと思ってた」
冷蔵庫からお茶のボトルとグラスを持ってソファに座る。コトリコトリ、俺の前にも一つ置いた。
「来ないつもりだったけど…」
「けどなんだよ?」
「……」
「俺に会いたくなったのか?なんてな」
「そうだって、言ったら…」
どうします?最後まで言葉にできず口は止まった。なに?この空気はなに?俺、変なこと言った?いや、言ったな。確かに会いたかったけど、それは勘違いしてたことを確かめる…謝る…なんて言えばいいか分からないけど、俺の誤解だったって言うのを伝えたい…?違うな。
なんだろ…?
「会いたかったって言うか!なんて言うか、だから…えっと…ツッキーがあの棟からは見えないって!だからそれを知りたくて!」
「あぁ、月極に聞いたのか」
「…今日の、午前中に」
「それで?カメラも見てない、助けない俺らに幻滅したんだろ?」
「え?」
俺が言う前に勝手に話しだして、哀愁漂わせてる。なにこれ笑うところ?
よく分からない空気感に浸る彼を一先ず置き、お茶を飲む。それから負けじと大人びた?が良く分からないけどこの空気を壊さぬように落ち着いた話し方を精いっぱい考えてみた。
「ワシは、幻滅などしとらん。逆じゃ、何故あんな嘘を言ったか、知り給うてな」
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