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第126話

「………」 ふいぃ…出もしないのに低い爺の声頑張ったー。 いい仕事したな。よし、帰ろう!! 何事もなかったし用事は分かんないけど済んだことにして帰ろう。直ぐ帰ろう!マジ速攻帰る!! 「うおっ!」 「逃げんじゃねぇ!」 「ですよねっ!」 速攻で走ったけど彼の後ろを通らないと扉に行けなくて、もう逃げ足に掛けるしかない!と自分を信じたらこうなったよ!まあだと思ったけど! 掴まれた腕を振り払おうと力を入れた途端にいや、明らかに可笑しいこといったからなお前!言葉が飛んできた。 「大体なんだよあの喋り方!いつのどこのじじい持って来てんだよっ」 「俺ん中の爺が勝手に話し出してきただけで俺の所為じゃないっ!」 「……もしかして、年齢詐称してんのか?」 「してないですからね!まあ、ちょっとは年上に見られたいと思わなくもないけど…」 どうしてこうなったのかもなんで爺が出て来たのか分かんないしと言うか冷静に分析しないでくれ心が痛い。ごにょごにょ言ってたら何かに気付いたようでハッとして俺の手を離した。 「お前みたいにチビで童顔じゃ、いつまで経っても年上に見られねぇもんな…すまん、気付いてやれなくて」 「憐れむんじぇねええ!この老け顔野郎!!」 「老け…?大人びてんだよ!見た目も頭脳もクソガキ!!」 「コナンでディスんな!それに見た目は年相応なんだよ爺顔!」 「っざけんじゃ、ね、ぇ…おいっ!?」 大翔とやり合う時みたいな言い争いになんでか力が抜けて、そしたら立っていられなくて、ソファの後ろにしゃがんで体を預けるしかなくなった。 なんだろ。分かんないけど、良かった…… 「急になんだよ?泣き虫いじけ虫か?」 「泣いてないですし。それに、フローリングのマス目数えてるだけです」 そうかよ。笑いと呆れの中間みたいな声で言われ、それからワシワシ頭をかき混ぜられた。 大きくて温かい手だなと思った。

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