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第129話

だって、なんだよ? 聞かれ噂の広まる速さや明るくない未来やトラウマになると思ったことを気付いたら全て話していた。 「なんだそれ」 「理解されないのは分かっているんで、いいです」 「ああ、わかんねえ。なんで他人の為に自分が犠牲になんないといけねぇのかも、それを理由に抵抗しねえ訳も」 「だから!」 「じゃあお前の気持ちはどこにあんだよっ!」 返す前に被せられた言葉は浴室に気持ちいいくらいに響き、外にまで漏れているんじゃないかと他人事みたいに考えた。 「人を思うのは良いことじゃないですか」 「ちげえよ!なんでもっと、単純に考えねえんだ?玲音、お前はイヤじゃなかったのか?殴られてる時もあいつらの未来を考えていたのか?それで抵抗しなかったのか?」 「それは……」 思い返してみて、あの時は早く終われって、ガチBLならヒーローが現れていただろうなって、全然彼らを考えていなかったことに気付いた。 「なんで今頃気付くかな?お前本当はバカだろ」 「……おたんこなす」 「ああ!?」 「俺だって、ヒーローを待ってた!やり合って勝ちたかった!」 「そうか。悪かったな、助けに行けなくて」 ぐしゃぐしゃ力いっぱい髪をかき混ぜられ、グッとそのまま頭を抱かれる。顔に触れた肌はしっとり温かくて、じわりとどこかが滲んた。 「いいんです。潤冬さんの所為じゃないですし、気付いてて着いて行った俺が悪いんです」 「……あ、立ったは」 「え」 「お前がしおらしくしてんの見てたら立った」 「っ!やっ、んん――っ!」 風呂場だから勿論隠すものなんてない。腰に手も周ったままだから直接触れるし臍の窪みに押し付けてくるし動くたびにヌメつく糸が何本も繋がるし早々に見ていられなくなって顔を上げたら口を口で塞がれていた。

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