「彼にそんな危ないものは付いてないですよ」 「……は？冗談抜かすなよ。ならどうしてランやリューみたいなのと知り合いなんだ」 「さぁ、僕にも分からないですが、うちの嵩音とも仲は良さそうですね」 「嵩音って、生徒会長の、だよな？」 「ええ」 鈴慟学園のトップをこぞって手玉に取ってどうするつもりだよ。呟いた彼に眼鏡をクッと手で上げ相手もまた呟いた。羽葉君は手玉に取ってる自覚がないんですよね…… 更に厄介な事実に頭を抱え遂には溜め息を吐く始末。 だが自覚がないということは、これ以上厄介ごとは起こらないのでは？そこまで考えたが、いない筈の玲音のことで未だ盛り上がる目の前にああ、ダメな方だ。と深い溜め息をもう一つ。 「魔性の女、ですね。今も昔も」 「ん？まさかお前もとか言わないよな？」 「いえいえ僕は違いますよ」 「ならいいんだけどよ。お前みたいにまともな奴まで、とか言い出したらもうお手上げだ。当人たちで好きにしてくれと、俺は投げ出すから」 言いながら両手を顔の横に持って行きお手上げのポーズをとって見せた。 本心は今すぐ投げ出し逃げ出したい。なのだがここにいるのは自分で志願した所為で放り出せないのである。 「んふふっ」 「あ。笑ったな？」 「ゴホン、すみません」 「いやいいよ。つうかお前も笑うのな、タカシ」 「えっ、あ、僕だってたまには…」 「真面目な堅物かと思えば可愛い所もあるんだな」 彼は背伸びして相手の頭をわしゃわしゃ撫でまわし満足気に笑い声をあげていた。 「タケが生徒を侍らせてる」 「それを言うならたぶらかすだ、ランディ」 「クール？冷めた眼鏡くんに火を灯す」 「……喧しいわ！サッサと仕事始めろ！溜まってんだよ」 「あぁ、ただの欲求不満か。抜いてやろうか？」 何気なくボソッと言ったランディのそれに仕事に決まってんだろ！馬鹿野郎！今日一の声量とスパコ――ン！といい音が鳴り響いた。 ××× 暴力反対。