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第167話
「ならないよ」
二口目をこくんと飲んでから俺は返した。
「本当?だって、風紀委員の人、凄く怖そうだった……」
不安顔をしてたけど暫く見ていたらああ言ってきて、だから俺も年押すよう喋ったら優しい感じだったから大丈夫だよと噓をつく。まだ不安そうにしていたけど、何も言わないで今度は頷いた。
めちゃくちゃ渋々、という感じで……
「玲音は、ここに来てまだ数ヵ月でしょ?それなのに全然寮にいなくて、落ち着けてなさそうで、僕、心配なんだ」
「ははっ、確かに色んなことに遭遇し過ぎてるね。風紀委員とか」
「僕、玲音が好きだよ。さとし君もひろ君もみんな、玲音が好き。だから、危ない目に会って欲しくない。それにね、美味しい紅茶はみんなで飲みたい」
「ひなた……」
胸にジーンときた。マジ天使の言葉。
内心思いはするけどたぶん、陽向の言う危ない目にはもう会ってる。雅さんも彰さんもだけど、俺の周りって心配性が多すぎる。
俺、そんなやわに見えるかな……図太そうに見えない?どうしたらいいんだ?
まあでもごめん。今更あのこと思い返して言う気もないし、言って更に心配もかけたくない。
こくんこくん、ティーカップを傾け勝手に上がってくる言葉をお腹に流す。
「あ、あとね玲音」
「ん?なに?」
「これ、お風呂場にあったよ」
コロンと手に転がって来たのは潤冬さんに貰ったピアスだった。ブルーとゴールドが部屋の明かりでキラキラ輝いてた。
「綺麗だね」
「うん。貰ったんだ」
「貰いもの?へぇ、素敵。月に星に、青緑の……」
「ブルージルコンって言うんだって」
「そうなんだ!初めて聞いたけど、透き通ってて本当に綺麗で可愛い。お姉さんに貰ったの?」
「ううん、違う。と言うか、これめっちゃ女物っぽいね!」
え?陽向は驚いてたけどもうそれどころじゃ無い。
だって潤冬さんが自分でこの可愛いピアスを買ったのかと思うと、もう笑うしかない。あの俺様顔でこんな、可愛い…かわ…か……ギャップ萌えかっっ!!
そう言うの大好きだわっ!!大好物だわ!!
「れ、玲音?どうしたの?大丈夫?」
「オッケィ!超元気!!」
急にテンション上がってグッド!と親指を立てていたら、その後めちゃくちゃ心配された。
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