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第171話
尻もちを付くことなく後ろの熱に支えられ、追いついた大翔にも正面から迫られ、俺を具にしたサンドイッチが生まれてしまった。
「離せよっ、俺なんかどうでもいいんだろ!?2人で盛り上がってればいいじゃん」
「バカか。玲音なしでどうヒロと盛り上がれって言うんだ」
「俺かてそうや!こいつと2人なんておもろない!」
「でも!さっきは2人で楽しそうだったじゃん」
大翔のブレザーを両手で握り前後に揺すりながら俯いて首を振る。
あ、なんか涙出て来た。
「アホやなぁ…そう思わん?惺士」
「ふっ…本当だな」
「え?」
顔を上げれば優しく笑う大翔にゆっくりブレザーから手を外され、そのままギュッと握られ、後ろからも片手を奪うように下から掬い取られ握られ、振り返るとニッと笑う惺士がいる。
今度はスイーツサンドの出来上がりだ。
「どういうっ、こと、だよ……」
「まだ分かんねぇか?」
「俺らは、玲音をっ、嵌めたことで笑っとったんやでっ」
「寂しくさせて悪かった」
「俺もや、すまん」
「2人とも……って!許すかぼけぇえ!顔がめっちゃ笑ってんだよおおお!!」
「うおっ!急かっ!」
「ぎゃはははっ!こないヒロインいややぁアハハッ!」
腹を抱えて笑っていやがる!マジ許すまじ!!マジ許すまじ!!
再度ブレザーを掴んでガクガク前後に激しく揺らす。ちゃっかりしっかり皺が付かないように俺の手を外していたけど今度はそうはいかない。ぜってぇ放してやらねぇ。
「せやけど自分かてわろとったやないか!泣き笑いてめっちゃ器用やでっ!!」
「うっせぇ!自分でもちょっと恥ずかしくなったんだよ!ぶり返すんじゃねぇよぉっ」
「でも一番は惺士やで!あない真剣な顔せんでもええやろ!もう少しで吹き出しとったわっ!」
「いや、俺は至ってマジだったから。なんで笑ってんのかマジで意味分かんなかったから」
「そのキメ顔やめぇええ!!」
「ぶはははっ!マジ顔やめてぇぇえハハハハッ!!」
「……っ、ぶはっ!もう無理だ我慢出来ねぇ!」
ゲラゲラ笑い続ける俺たちを首を傾げて後ろの2人で見ているなんて知らず、3人で席に戻ると陽向に真面目声で終わった?と聞かれた。
それにまた笑ってしまい正直悪かったなと思った。
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