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漆黒の瞳、その奥には光

【大介side】 週末の球技大会に向けて、本格的に練習が始まった。 たかが球技大会だなんて甘く見てもらっては困るんだ、うちの学校の場合。なんたって賞品がすごい。優勝クラスは食堂の日替わりランチの食券が一人につき10枚ももらえる。準優勝でさえ一人5枚なんだから、そりゃあみんな必死にもなる。 「おっしゃー!絶対優勝すんぞーっ!」 「うぉおーーっ!!」 円陣を組んで気合いを入れて、さっそく練習が始まった。 「ヒデキ、リバウンドはポジション取りが大事だぞ」 「おう、サンキュー!」 ゲーム中にもそうして俺以外の動きをきちんと見ていて、的確にアドバイスしている。一方の俺は、慣れないポイントガードに苦労していた。 ゲームメイクして、フリーのやつにパスを出す。その一瞬の判断が遅れがちなんだ。 「くそっ、わかんねぇよ…」 悔しい。出来ないのが。出来ないと思ってしまう自分が。 今俺が抜けてる間は、ジャスティンがそのポジションに入って動いてる。さっきまでのメンバーの動きとは全く違っていた。 サイドから攻めていたと思えば、中を通してみたり、ゆっくり進めたり速攻でいったり。その全ての指示を出しているのはジャスティン。俺には出来ない。 タオルを被って壁に凭れていたら、人の気配がしたので顔を上げてみた。 「はい、ちょっと休憩ね?」 「創……さんきゅ」 はい、と差し出されたペットボトルが、ひんやりしていて気持ちいい。首の後ろにぴたりと充てて、体を巡る血液を冷ます。 そんな俺の隣に創が並んで腰を下ろした。 「あのね、おれと継は同じだけど違うんだ」 「そんなの当たり前じゃん。創は創、継は継だろ?」 「うん。だからね、大ちゃんも。ジャスティンと同じポジションだからって、同じ事しなくてもいいんじゃないかな?」 にこりと笑ってそう告げると、休憩するためにコートを出た継の元へと走って行った。

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