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漆黒の瞳、その奥には光

その次のゲームは、さっきと違って周りの動きが見えた。というより感じ取れた。 リバウンドを取った戸川からのボールを受ける。さあ、どうやって攻めようか。そう思った瞬間に、アウトサイドを走るジャスティンが見えた。どこに向かっているのかも、なんとなくだけど分かった。 ドリブルをしながらパスを出すタイミングを窺う。一瞬、俺とジャスティンとを繋ぐ線が見えた気がする。 「ダイスケ!」 「っ!!」 今だ、というところでジャスティンの声が聞こえるのと同時に、俺の手のひらからボールが飛び出していた。 二回ボールを着く音がして、パスっ…という気持ちいいネットの音。 あ、なんか、今のいいかも。 笑顔で駆け寄ってくる継やジャスティンにがしがしと背中を叩かれた。 見上げた先のジャスティンが拳を突き出してくる。コツ、と合わせると、囲まれていた俺をそのまま引き摺り出して抱き締めてきた。 「今の感じ、良かっただろ?」 「あ…ん、そうだな。てか離せ。降ろせ」 ああ、こいつも感じたのかな?俺とお前を繋ぐもの。 とりあえず抱き上げてる手のひらを抓ってやった。 その後も、俺とあいつを繋ぐ線がプレイ中に何度か見えた。その時のプレイは、見えない時のものと比べて天と地くらいの差がある。 走り出すタイミング、パスを出すタイミング、ボールのスピード、強さ…全てが完璧だった。 それがだんだんと、リバウンドを取った戸川からのパスをもらう時、サイドを拡げる継の動き、中へ切り込む倉留の動き…ジャスティン以外のメンバーにも感じられるようになった頃、チャイムが鳴った。 なんか、夢、みたいだ。 体がふわふわしてて、なんかぼーっとする。 「……なんか、分かったかも」 「うん?」 いつの間にか隣にいたジャスティンが、頭からタオルを被せてくれた。それで顔を覆うと、きゅっと目を閉じる。 さっきの感覚が蘇る。 再び目を開けて、ジャスティンに拳を突き出した。 「…いい瞳だ、吹っ切れたな」 「おー、」 合わせた拳が熱かった。

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