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決戦は金曜日

「いっ、つ……!」 気が付けばそこは体育館だった。もともと朝練のためにここへ来る予定ではいたんだけど。 ガサリと袋が地面に落ちて、両手を取られたまま壁に追いやられた。 じっと見つめてくる。目が合う。けど、堪えきれずに逸らしてしまった。 「…ダイスケ、こっち向いて」 「っ、や、だ…」 ぐいっと顎を掴まれて、顔ごと真正面に固定された。恥ずかしい。きっと俺今すごい顔してる。 「…何を、迷ってる?」 「う、わ…近いって…!」 「今すぐここでオレのものにしていいなら」 「わーっ、違う違うっ!そういうんじゃなくてっ!」 いきなり何言い出すんだこのバカ! 「じゃあ何?今日のゲーム?」 「………違う、そうじゃない」 じっと見上げると、額にキスされた。 イヤじゃない。これだけで安心できるのが不思議に思えてきた。 「お前の隣にいるのは、イヤじゃない…」 「うん…」 「…トレーナー、俺、で、いいのかなって、…そう、思って」 俺が高校卒業して専門知識の勉強して…最低でもあと4年はかかる。その間にこいつはもっともっと実力をつけて、それこそプロでも通用するくらいになるだろう。 そうなったら、俺なんかよりもっとベテランが付いた方がいいに決まってる。 「ああもう…shit!日本語がわからない!」 「え、なに…いてっ、いてーっつうの!」 こつんと額を合わせてきたかと思ったら、ぐりぐり押し付けてきやがった。痛い!額もだけど後頭部が壁に当たって痛いんだよ! 頭上でひとまとめにされた手のひらが振り解けなくてじたばたしてると、ふっとその拘束がなくなった。代わりに、腕ごと抱き締められて、肩口から伝わる吐息。 「ダイスケにやってほしいんだ、いつまでだって待つ!」 「……俺で、いいのか?」 「I want you to be my trainer!」 抱き締められる腕に力がこもる。自由になる手のひらで、ジャスティンのシャツを掴んだ。

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