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こら、くすぐったいだろ

それからすぐに家に帰り着いた。 玄関を開ければ夕飯の匂いがプンプン漂ってくる。こりゃ相当気合い入ってんな… 「ただいまー。ほら、入れよ」 「ああ、えーと…邪魔するぜ?」 「どこで覚えた…」 ほんと、こいつ頭良いんだか悪いんだか、たまに謎だよな。 とりあえず中に入ってキッチンに顔を出すと、案の定すごい数の料理が並んでいた。 「ただいま」 「お帰りジャスティンくん!待ってたのよーっ!」 「こんばんは。突然お邪魔してすいません」 「ほんっと礼儀正しいわよねぇ…」 うんうんと頷くと、徐にジャスティンの手を取ってにこりと笑う。 ああ、なんかイヤな予感しかしない。しかもイヤな予感ほど当たるんだよな… 「ふつつかな息子だけど、末長くよろしくね?」 「もちろんです、お母さん」 穴があったら埋めてしまいたい。 なんだこの二人、アホか?そうか、アホだ、うん。 荷物置いてくるとだけ言い残し、ジャスティンの腕を引いて部屋に向かった。 「しね」 「Why??」 なんかもうため息しか出ない。 こいつとの関係モロバレじゃん、恥ずかしい通り越して呆れるわ、自分の親ながら… 双子が近くにいるから偏見がないとはいえ、軽すぎんだろ。 ベッドの淵に腰を下ろしたら、すかさず隣にジャスティンも座る。 「ダイスケ」 「ん?」 「ハグしたい」 「禁止っつったろ」 「じゃあくっつくだけ」 そう言うと、ほんとにくっつくだけに留まるかのように、肩口に擦り寄ってきた。 なんだよ、忠犬だな。 「こら、くすぐったいだろ」 「…部屋ならいいと言ったのに」 ちっ、覚えてたか。 首筋に髪が触れてくすぐったいのを我慢して、そっと背中に回される腕に意識を向ける。 そんなに腫れ物に触るような手つきで扱わなくてもいいのに。 「…もっとちゃんと抱きしめろよ、バカ」 ぎゅうっと背中に手を伸ばしてシャツを握り締めると、回された腕に少しだけ力が入った気がした。

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