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誰にでも懐くなよ
目が覚めると腕の中にダイスケがいた。
なんて素敵な一日の始まりなんだろうか。
「…ん、」
さらりとした黒い髪に指を通すと、その体が少し身じろいだ。
ゆっくり寝かせてあげたい。でもその瞳に早くオレを映してほしい。はやく声を聞きたい。
「Good morning」
「んんー………んぅ?」
鼻先に柔らかなキスを一つ落とす。胸元に擦り寄ってきた。思わず抱きしめると、きゅっとシャツを握りしめてくる。
もう可愛くて可愛くてどうにかなりそうだ。
「ダイスケ、そろそろ起きようか?」
「ぅん…」
起きてもらわなければ、そろそろ自制が効かなくなる。
とん、とん、と背中をゆっくり叩いてダイスケの意識を浮上させてやれば、薄っすらとその瞳にオレを映し出していく。
しばらくぼーっとした様子だったが、突然はっとしたように起き上がってこちらを見下ろした。
「なっ…なん、なに…ッ!」
「オハヨウ」
「おっ、おは…よ、」
ああ、きっと頭をフル回転させてこの状態になったわけを考えているんだろう。
隣に座って、混乱してるだろう頭をくしゃりと撫でてやれば、じっと見上げてきた。
うん、これは挨拶だから。
「グッモーニン」
「っ!?」
頭を撫でていた手のひらを頬に添えて、そっと唇を重ねた。
挨拶。だからすぐ離れなきゃ。そうは思っても、この柔らかな唇に吸い寄せられる。
「っん…は、ぁ」
息継ぎのために開いたそこから侵入する。寝起きだからだろうか、触れた舌が熱い。
軽く擦り合わせるだけで体がぴくりと震える。可愛い。
頬に添えていた手のひらに、そっとダイスケの手のひらが重ねられた。
かと思ったら、甲をぎゅーーーっと抓られた。
「Ouch!ちょっ、ダイスケ??」
「朝から調子乗んなボケッ!」
「はは、朝の挨拶だろう」
がつがつと胸元に頭突きしてくる体を捉えて、ぎゅっと腕に閉じ込めた。「うー…」なんて唸っていて、ほんとに猫みたいだ。
黒い髪に唇を押し付けると、すぐに大人しくなって背中に手が回された。
オレの可愛いtomcat、頼むから、他の誰にも懐かないでくれよ?
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