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何も聞かずに抱き締めて
【創side】
夜中に突然目が覚めた。
息がうまく出来ない。心臓がどくどくと大きな音を立てて脈打ってる。体が熱いのに、指先だけは妙に冷たい。
何かに縋りつきたいのに、体が動かない。
「っ、は…けぇ…っ!」
何故だかわからないけど、ぼろぼろと涙が零れてきた。
「…どした?」
不意にぎゅうっと暖かな何かに体を包まれる。それが継だと気付いた時には、頬を流れる涙を指で拭ってくれていた。
体が動く。指先にも血が巡るのがわかる。
そっと体の向きを変えて、逞しい胸元に擦り寄った。ゆっくりと背中を撫でてくれて、おでこにキスしてくれる。
たったそれだけの事なんだけど、すごく安心するから。
「…なんでもない。もっとぎゅってして?」
「ん…」
その温もりに包まれるだけでいいんだ。
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