302 / 507

何も聞かずに抱き締めて

【創side】 夜中に突然目が覚めた。 息がうまく出来ない。心臓がどくどくと大きな音を立てて脈打ってる。体が熱いのに、指先だけは妙に冷たい。 何かに縋りつきたいのに、体が動かない。 「っ、は…けぇ…っ!」 何故だかわからないけど、ぼろぼろと涙が零れてきた。 「…どした?」 不意にぎゅうっと暖かな何かに体を包まれる。それが継だと気付いた時には、頬を流れる涙を指で拭ってくれていた。 体が動く。指先にも血が巡るのがわかる。 そっと体の向きを変えて、逞しい胸元に擦り寄った。ゆっくりと背中を撫でてくれて、おでこにキスしてくれる。 たったそれだけの事なんだけど、すごく安心するから。 「…なんでもない。もっとぎゅってして?」 「ん…」 その温もりに包まれるだけでいいんだ。

ともだちにシェアしよう!