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好き、だからキスしたい

ばあちゃん先生のとこで創がレッスン受けてる間、オレは後ろのソファでごろごろしながら、創の細い指から奏でられる綺麗な旋律を聴いていた。うん、今日も好調だな。 一通り弾き終わると、カーペットに寝転がりソファの肘掛けに足を乗せて腹筋したり腕立てしたり。最高のBGMがあるから辛くなんてない。 時折ちらりと創の後ろ姿を眺めて、その真剣な様子を見守る。いつもふわふわでほわほわな創だけど、この時だけは絶対にそんな顔をしない。 3時間という長くて、でもあっという間のレッスンが終わり、椅子からこっちを振り返る創は、もういつものふわふわな創だった。ばあちゃん先生が用意してくれたクッキーを食べながら、三人でテーブルを囲む。 「継ちゃんはほんとに創ちゃん大好きねぇ」 「おう、だってオレのだし」 な?と創に同意を求めてみれば、にっこりと笑ってくれた。ああもう、可愛いな! あー、すっげえ今ちゅうしたい。 「継、帰ろうか」 「ん、じゃあな、ばあちゃん」 「はいはい、気を付けて帰りなさいね?」 玄関口まで見送ってくれたばあちゃん先生に手を振り、ドアを閉める。と同時に腕を引かれた。 「…継、キスしたい」 「オレだってしたいし」 見つめ合って、吐息が触れて、唇が重なって。 月明かりの下で、お互いの気持ちを伝え合った。

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